ケイワスが証明する自給飼料型経営への転換

 酪農家の目的は一般の企業と同じく、最大の利潤を上げることに他ならない。しかしながら、酪農家をリードするいわゆる「技術指導」は多くの場合、「飼養管理技術を駆使して、乳量を上げることだけ」に主限が置かれていないだろうか。問題はそのことと酪農家の利益が一致しないことばかりか、逆に、酪農家の損を拡大させる理由になっていることだ。言うまでもなく企業経営の最も重要な3つの指標は
(a)売上高、
(b)粗利益率、そして
(c)資産(負債)管理−土地・乳牛・機械の効率的な回転と荒利益に対する利回りの管理

である。これらのバランスがどれていなければ問題が生じる。今時の「技術指導」の一大問題点は今だに「高乳価」+「高子牛価格」をベースにした乳量一辺倒の技術なのである。しかも、NRC飼料標準というバイブルを基本とした買いエサ中心の指導である。 飼料計算にコリ始めると「粗飼料の品質が多少悪い場合でも、飼料計算をして濃厚飼料を増やし、家畜の要求量を満足してやれば良いではないか」という考えに到達しがちである。それでは、現実にには個々の酪農家の乳生産や乳質が粗飼料の質・量、やり方でどうしてこうも大きくプレルのかと言うことだ。 ケイワス博士が1983年に行った給与試験結果はその意味で実に興味深い。(図1・表1参照)この実験は刈り取り時期の異なるアルファルファの乾草をベースとし濃厚飼料の給与比率を20%(4s)から71%(15s)まで変え、その飼料を給与した乳牛の産乳量を測定したものである。ケイワス博士の試験についていくつかの重要なポイントがありそれを列記すると以下の通りとなる。

図1 ケイワスの実験
刈取り期別の平均乳量の違い


表1 粗飼料の品質と濃厚飼料レベルに及ぼす影響
(アルファルファ乾草)
濃厚飼料乾物中(%)

アルファルファ乾草の刈り取り時期
搾乳牛あたり濃厚飼料推定給与量(s/頭/年)※

開花前

開花初期

開花中期

開花後期

平均
20 36.2 30.9 26.0 23.7 29.2 1,200
37 37.8 31.4 28.4 25.2 30.7 2,300
54 39.6 35.1 29.4 31.6 33.6 3,500
71 39.1 35.1 29.4 31.6 33.8 4,600
平均 38.2 33.1 28.5 27.5    

(KAWAS,1983)  ※:筆者加筆部分

ポイント@最大乳量は最大利益を生むとは限らない

 濃厚飼料の給与量は4sから12sに増加させるとそれに応じて乳量がほぼ直線的に伸ぴ、それ以上濃厚飼料を給与しても乳量の増加には貢献しないことがわかる。これは「濃厚飼料は、喰わせても12〜13sまで」という長い間の経験則に合致する。ケイワスの実験で得られるデータは光の当て方によって実に多彩な見方ができる。つまり、ある酪農家はこの表を見て、どうすれば最大乳量を得られるかを考えるであろう。当然のことながらその場合「刈り取り時期は開花前で濃厚飼料を12sやって39.6sの乳量を得る」ところを目指すであろう(表1の青部分)。しかし、よく考えてみれば同じ開花前の刈り取りで4sの濃厚飼料をやって乳量36.2s(表1の赤部分)に比べて、日量3.4sの乳量の増加しかない。つまり、日量8sの濃厚飼料を増やして(濃厚飼料を4O円とすれば、4O円X8sで320円の支出増)3.4sの乳量増加(1OO円乳価とすれば、1OO円X3.4sでご34O円の売り上げ増)である。34O円の売り上げ増加のために32O円の支出増では採算は赤字である。粗利益率が3O%とすれば1O2円の粗利の増加で32O円の支出増で何と乳牛1頭当たり1日218円の損なのである。例えば、4O頭飼養していると年間で261.6万円(218円X4O頭X3OO日)の損失となる。実際の酪農経営では乳量の増加にばかり目を奪われてこうした投入コストを考えない場合が多いのではないか。では、どうすればそうしたことをふせげるのか。それは前々月号で紹介した熊本県の森山さんのように乳量より、所得率の増加を常に目指すべきである。会社で言えば売上高ばかりに目を奪われずに粗利益率の高いビジネスを志向するのと同じである。何故なら、今時の経営環境は生産調整・低乳価の近未来を視野に入れてやらねば、余りにも危険が大きいからである。そのためにはまず所得率を確かなものにして増頭するべきである。

ポイントA飼料品質の質の良い人が一番利益が高い
 この場合「粗飼料の品質が悪い人は一番儲からない」という言い方でもよい。
 先に述べたとおり、これからの酪農経営のポイントは

(a)高い売上高、(b)高い粗利益率、(c)優れた資産管理、

である。まず高い粗利益率を目指しつつ、やはり次には売上高を目指すべきなのである。つまり、乳量の増加である。実験結果を見れば一目瞭然で粗飼料の質が良い開花前の刈り取りのものは、その他の刈り取り時期で、どんなに濃厚飼料を与えたものより乳量が多いことが解る。つまり、「濃厚飼料の量は粗飼料の品質をカバーすることができない」ということを証明している。賢明な読者ならポイント@・Aを総合判断して最も利益の出るやり方は開花前で刈り取り、濃厚飼料を4sに抑えることだと悟るだろう(表1の赤部分)。言うまでもなく、濃厚飼料を売る側の論埋から言えば酪農家が開花後期で刈り取って12sの濃厚飼料を給与することがベストである。何故ならこの場合、濃厚飼料を与えれば与えるほど、最もドラマチックに乳量が増加するからである。しかし、これでは最も酪農家が損をするパターンと言わざるを得ない。

ポイントBケイワスの理論を日本酪農にあてはめるとどうなるか
 日本でアルファルファが十分に自給飼料として利用できる土地はほとんど無いのだから当然アルファルファの乾草は、買いエサということになる。まして、開花前の刈り取りベストな品質のアルファルファの輸入乾草ならばキロ1OO円以上はするのである。これでは採算面からも考えざるを得ない。こうした良質の粗飼料は乳量生産に良いとわかっていてもコストを考えると採算が合う話ではない。だから、とどのつまりどんな円高であろうと粗飼料を自給飼料として如何に作るかが経営の鍵となることが解る。ではアルファルファに変わるイネ科牧草を自給した場合、品質の差(刈り取り時期の差)はアルファルファの差どころではないはずである。言い換えればアルファルファだから粗飼料品質の差があの程度の乳量差と言える。また、サイレージにした場合、そこにサイレージの発酵品質や水分の問題があり、さらに乳量や乳質の格差は広がるはずである。 いま一つの問題はタンパク源を粗飼料で追い込むよりエネルギー源としての粗飼料のほうが飼養管理上やさしいし、コスト面でも有利であることだ。乳牛はエネルギーが多少過多でも体脂肪として堆積できるが、タンパクが多い場合は利用されずその分無駄なだけだからだ。
 開花前に刈り取ったアルファルファの品質とイネ科牧草の収量の低さをカバーし、サイレージ品質が良く、飼養管理面で得な全ての面で理想的なものは「自給飼料としてのデントコーンサイレージ」ということになる。しかもデントコーンの特性は牧草と違い品質の向上と収量の増加が反比例しないことだ。しかし、農家によってこの品質の差が大きいことも事実である。より安全な収穫のために早生系のジャンナや3795などの新品種を使い、播種に注意し、サイレージ調製をキッチリやることである。デントコーンは「真面目に作れば作るほど利益が出る」最大の経営資源なのである。 サイレージの品質向上とエネルギー濃度の増加をネラウなら絶対に「ジャンナ」。しかもディアより早生⇒


↑3795は93日クラスなのに乾物収量でディアよりも2割以上も高く、道央は勿論のこと、十勝・網走の一部でも十分栽培可能だ