高エネルギー粗飼料だから儲かる繁殖管理だ

企業経営の3大指標は
@売上高
A粗利益率
B総資産利益率(ROA)
と言われている。酪農家にあてはめれば
@総乳量
Aコスト低減による原価率
B乳牛・土地・機械などの資産に対する利益率
と言える。1月号より乳量だけでなくコスト低減が近未来の酪農では不可欠と論じた。いわゆる第3の利益である資産の有効な利用方法、つまり本稿では乳牛のROAについて言及したい。土地や機械の高度な利用による自給粗飼料の高TDN化や量的拡大は、当然のことながらROAを上げる源だ。しかし、高品質(自給)粗飼料はそればかりでなく、飼養している乳牛(あるいは育成牛まで含めて)の付加価値を繁殖プログラムを通じて飛躍的にアップさせる。

■最大の利益ノウハウは?
 乳検で1万何干キロの産乳だと言っても必ずしも儲かる経営を意味しない。繁殖管埋に失敗すると空胎期間が延ぴ延ぴになってしまって1日当たりの平均産乳量がガタ落ちとなる。1万キロの乳検の成績でも1日当たりの平均乳量なら8干キロの人にかなわないなんてこともありえる。それに繁殖管埋上の不安感から育成や末経産の予備群をついつい増頭する結果となる。これでは、資産は資産でも不良資産を抱えて、結果としても最終利益はガタ落ちとなる訳だ。高泌乳牛群と言ってはみたものの、全然儲からないと1人で泣くのはこういう人を言うのだ。
 我々が本誌を通じて主張していることの1つに、NRCの飼養標準の致命的問題点である粗飼料の質がある。この粗飼料の質は、実は酪農家の利益源の最大のノウハウであり、最も格差のつくポイントなのだ。格差というのは先に言った経営の3大指標の乳量・コスト低減・そして、この繁殖プログラムを含めたROAすべてに格差がつくことに外ならない。

ポイント@エネルギー不足がほとんどの原因となる繁殖障害
 分娩前のエネルギー不足は、分娩後の再発惰の遅れにつながる。これは体重が分娩を境に20%以上も減少すると、発情を支配する脳下垂体の機能に異常が生じるからである。また、泌乳初期は高泌乳牛であればあるはど、自らの体脂肪を削って産乳するためエネルギー不足であれば卵巣の機能回復が充分に行われず障害を起こす。
 注目すべきは、エネルギー不足を補うために濃厚飼料で追いかけようとしても根本解決にならないことだ。それはNRCの飼養標準という、結果にしか物を言わない飼養管埋の決定的欠陥なのだが、エネルギー不足の真の原因は粗飼料の質なのだ。それが証拠に昭和50年代に一世を風靡したチェイス博士のチャレンジ・フィーディングが、高泌乳牛の増加と共に繁殖障害を増加させたことでもわかる(チェイス博士の真意は濃厚飼料の多給でなく、乾物摂取量の最大化であったことは我々のチェイスによる紹介〈昭和63年〉によって明らかにされた)。

年度別分娩間隔

「日本農業新聞(2月23日)より抜粋」

平均空胎日数は北海道で128日全国平均で139日。前年より7日長くなった。また、平均分娩間隔は406日で
ここ数年延びる傾向にある。エネルギー不足が原因だ。

 乾物摂取を最大にするにはエネルギーや栄養濃度の高い粗飼料をどれだけ食い込ませるかだ。多くの酪農家は粗飼料を飽食させたことがないためにどんな品質のものがどれだけ食い込めるか知らない。そして、一番多く食い込めるかが高品質かどうかの評価のポイントになるのだから、結局どんな粗飼料が、あるいはサイレージが高品質かがわからないでいる。粗飼料の食い込みが良ければ濃厚飼料を含めた乾物摂取が上がるからである。また、粗飼料の食い込みが悪くて、濃厚飼料の量を増やしてエネルギーバランスをとろうとすると、乳量・乳質のみならず繁殖で泣きを見ることになる。 適期(水分65〜7O%)で刈り取った子実割合の多い黄金色のコーンサイレージや、あくまで若刈りした中水分の牧草(ルーサン)サイレージなら乾物でどんな牛でも15キロ以上も食い込めるのだ。そうした粗飼料を目一杯栽培し、うまくサイレージ調製し、しかも食わせ込む以外儲かる繁殖管埋は見当たらない。計算通りにエサを設計してもこうも差があるのはこの粗飼料の差だ、とわかっているかどうかが酪農家の経営の分かれ目とさえいえる。今からでも遅くはない!

ポイントAコーンサイレージは肥らない、配合を変えよ
 
「コーンサイレージは過肥牛を招く」と言われたのは過去の貧困な知識による誤解だ。誤解だけなら良いが、実は不必要な濃厚飼料のアンバランスな多給が真の原因なのだから、そうした技術知識は酪農家の機会利益を失ったことになる。それが証拠に、欧州最大の酪農王国フランスの酪農家のほとんどが乾物で13キロ以上のコーンサイレージを給与しているし、本誌で紹介した熊本の森山良一さんもコーンサイレージを4Oキロ飽食させ、平均8干キロ産乳で空胎期間は85〜9O日なのだ。
 全国的に言って産乳能力の高い牛が増えてきたから、エネルギー不足が目立つようだ。これからの種まきが大事な繁殖管理の第1歩であることは言うまでもない。
子実が一杯詰まっている乾物率30%のコーンサイレージ
高エネルギーでしかも抜群の食い込み。だから儲かる
乾物率も子実割合も発酵品質も悪いのに、NRC飼養標準では上と同じ栄養成分のコーンサイレージとして設計される。だからエネルギー不足で泣くことになる。
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台風に当てない107日タイプの早生で高工ネルギー新品種(3352より8%も上)。東北から九州までの主力品種。病気にも強い

115日の早生だが子実収量は3352より15%も上。抜群の高エネルギーコーンは断然「セシリア」