乾物摂取量がわかれば儲かる酪農がわかる

先月号では粗飼料のセンイについて説明した。粗飼料のセンイが解らなければ乾物摂取量(以下DMI)のもつさまざまな飼養管理上のポイントや酪農経営が解るはずもない。今回はDMIが何故、どのように重大な意味を持っているか、それが粗飼料の品質と如何に密接に結ぴついているかを論じたい。
■なぜ、飼料設計どおりに牛か飼えないのか。
 最近酪農家から「飼料設計どおりに給与しているのに疾病が多い」とか「思いどおりに粗飼料を喰ってくれない」という話を聞く。これらの原因は何なのだろうか?

 NRC飼養標準の13頁に「さまざまな飼料消化率のもとでDMlは次の式より予測できる。
DMI(乾物摂取量)=5.4W/500F、
ここでDMIはs/日、
W(体重)は生体重s、
Fは不消化なDM%が単位である。この式を使うと予測されたDMIは生体重の2.25%(消化率が52%の時)から4.32%(消化率が75%の時)までの範囲である。穀物や濃厚飼料の量が一日の飼料中に増えれば増えるほど粗飼料のDMIに及ぼす影響が変化する

と記されている。言うまでもなく、濃厚飼料や穀物の消化率は高く、飼料設計上の消化率は給与時のそれと誤差は少ない。しかし、粗飼料の消化率は草種の違い、刈り取り時期、切断長、醗酵品質によって大きく違う。購入粗飼料などはバラツキがあり、一定しない。だから粗飼料の消化率の違いこそ、乾物摂取量の変化の主因と言える。粗飼料の消化率はさまざまな要因で異なるから、実際には喰わせてみなければ解らない。つまり、どれだけDMIがあるか解らない。エサ設計は乾物摂取量と栄養総量を所写のものとして、あらかじめ設定することから始まる。「DMIは変化しない」と思い込むことが間違いのもとなのである。また、近年のように濃厚飼料や穀物の量が増えると粗飼料でNDFの高いものを与えざるを得ず、結果的にDMIを低下させる。つまり悪循環である。高品質の自給粗飼料でエネルギーを追い込んで、濃厚飼料を補完するという欧米の近代酪農経営の英知と無縁なのが濃厚飼料先行型の日本の酪農の姿である。こうした飼料設計は勿論、酪農家の利益をリードするものではない。
 表にNRCの乾物摂取要求量の値を示した。生体重6OOs、4%補正乳で4Os泌乳している牛には、体重の4.O%、すなわち24sもの乾物を摂取させなければならない。粗濃比を5O:5Oとすると、それぞれ12sづつとなる。濃厚飼料はDMIの制限要因となるNDF含量が少ないために問題なく摂取できるが、12sもの乾物を粗飼料として摂取できて、高泌乳牛のエネルギー不足を解決できるのは高品質のコーンサイレージが最も経済的なのである。自給飼料では乾物収量とかTDN収量を引き合いに出すことが多い。デントコーンは最もエネルギー収量の高い作物であるが、それでも、飼料価値として、乾物収量やTDN収量やその生産費を議論するのは重大な誤りである。どんなに乾物やTDN当たりの生産費が安いからと言って、それは乳牛の生産性とは何の関係もないのだ。名の通った酪農指導者ですら、圃場の生産性と家畜の生産性と混同しがちである。つまり、自給飼料は乳牛の生産性(産乳・疾病・繁殖)を上昇させる投資としての粗飼料であり、モトの取れる投資であればコストは関係ないのである。

表 維持、乳生産、泌乳中後期の正常な増体のための栄養を満たすための乾物摂取要求量【NRC第6版(1988)】

生体重s
500 600 700 800

(体重の%)





s
10 2.4 2.2 2.0 1.9
15 2.8 2.6 2.3 2.2
20 3.2 2.9 2.6 2.4
25 3.5 3.2 2.9 2.7
30 3.9 3.5 3.2 2.9
35 4.2 3.7 3.4 3.1
40 4.6 4.0 3.6 3.3
45 5.0 4.3 3.8 3.5
50 5.4 4.7 4.1 3.7
55 5.0 4.4 4.0
60 5.4 4.8 4.3
生産費の安い自給粗飼料だから、エサ代が安くなるからという理由で粗飼料をとらえるから損をするのである。良い投資を安く手に入れる方法は最大限の知恵を絞ることである。しかし、安いから良い投資とは言えないのである。例えば、デントコーンの乾物当たりの生産費が劣質な牧草と同じだったと仮定しても乳牛の生産性は比較にならない。劣質な牧草でもTDNは6O%、良質なコーンサイレージはTDNが7O%とされている。そうするとコーンサイレージは劣質な牧草の117%しか価値はないのかと言うことになる。前述のNRCの文章を今一度、読み直して頂きたい。52%から75%の消化率で体重の2%以上ものDMIの差が出るのだ。
この差はコーンサイレージの平均的NDFは黄熟期で51%であり、開花後期のチモシーでは7O%にもなってしまう。DMI換算するととてつもなく大きい。しかも粗飼料から大量の工ネルギーを供給させなければならない高泌乳牛には決定的と言える。近年、府県で見られるスーダングラスやリードカナリーグラスのようなTDNが低く、しかも、NDFの高い劣質な自給粗飼料をロール体系で収穫するのは(しかも、コストは高い!)「儲からない投資」の見本と言える。



デントコーンは最も見返りのある粗飼料の投資。
生産コストを考えるから損をする。


■どんなに円高になつてもコーンサイレージは最大の投資効果かある。
 さらに円高になれば、購入飼料が安くなるから、濃厚飼料や輸入粗飼料を増やし、頭数を増やす方向に走るのは単純すぎる。酪農というのは投下資本のかかるビジネスであり、投資・経費量収益がルーメン醗酵の複雑なメカニズムと絡まりあって複雑である。コストが安くなって儲かると言うのなら、稲ワラをタダでもらってきたと仮定して、高泌乳牛に与えてみれば解る。濃厚飼料としての飼料価値を持ちながら、粗飼料として牛が反応するコーンサイレージに代わる投資価値の高い輸入粗飼料はない。しかも高泌乳のエネルギー要求量に応える粗飼料であり、NDFは低いが十分なセンイを含む。買えないものは作るしかないのだ。生産費も、知恵を絞ればTDNキロ当たり3O円以下で作ることも十分可能であり、それは別稿で論じたい。
デントコーンの投資をさらに高める絶対不可欠な投資。