NDFを考えたらロールベールは”結局”儲からない

 ロールベーラー8,447台、ラッピングマシーン5,299台、これは平成元年から同5年までの5年間に日本国内で出荷された台数である。(農林水産省畑作物収穫調整用機械出荷台数より抜粋)ロールベーラーは1972年にMr.Grary Vermeer(イギリス)により開発され1974年頃から北海道を中心に導入されてきた。一方ラッピングマシーンはオーストラリアで開発され1986年から国内で販売が開始された。ロールベーラー+ラッピングマシーンの作業体系は従来の乾草体系と比較し水分の調整が比較的容易となり、天候の急変にも即応するとともにワンマンオペレーション作業が可能というふれこみで前述のように短期間で急速に普及した。しかしロールベールサイレージを家畜生産性を向上させる自給粗飼料として位置づけるには困難な問題も少なくない。ロールベール・サイレージ個々の品質のバラツキ、収量性の問題、作業性とコストなど生産性を阻害する要因もあると考えられるため、今回はロールベールサイレージとコーンサイレージとの差異にスポットをあて、それぞれの諸問題が家畜生産性にどのような影響を与えているかに関して話そう。
■牧草の質と量は一致しない
 乳牛の家畜生産性を高めポディコンディションを良好に保つための粗飼料とは乾物摂取量を最大にすることであろう。つまりNDF、ADF値が低い消化率の高いものを大量に確保しておかなければならない。しかし牧草の場合、宿命ともいえる点は生育ステージと収量との関係が反比例することである。要するに生育ステージの進行とともに収量は増加するがNDF濃度が高くなるため著しく消化率を低下させる。また消化率も高く栄養価の高い出穂前での刈取では単位面積当たりの収量を減少させることになる。ロールベールサイレージで家畜生産性を高める粗飼料を得ようとするならば常時刈り取りステージとNDF、ADFとの関係の壁にぶちあたるのである。ところがトウモロコシは熟度の進行とともに最も高い乾物収量を確保することができるのである。しかもその時点で最大のエネルギー濃度に達し、NDF濃度にも大きな変動はないので乾物摂取量を高める。トウモ口コシは牧草とは違い質と量が比例する自給粗飼料なのである。
■水分調整が難しいロールペールサイレージ


ロールは楽な分、
食い込めない
エサになる


1個ごとに違う水分が
牛を狂わせる

NDFが低く、TDNが
高いから食い込める
コーンサイレージ

 サイレージ醗酵に最も影響を与える物理的要因として原料草の水分が考えられる。圃場での予乾ムラはロールベールサイレージの醗酵品質に決定的な影響をもたらし、家畜生産性を大きく左右することになる。
高水分サイレージは酪酸醗酵を誘引し乳牛の嗜好性を低下させ、貯蔵中のベール内での水分分布が下部へ移行し、排汁の流出やべールの型くずれを引き起こす。結果的にはベール当たりの乾物量を低下させる。水分の低い原料草では梱包密度も低く空気の混入も多いためヒートダメージを発生させる要因となる。日本の気象条件と牧草の収積時期を前提に牧草の収積面積、作業、機械体系等様々な要因を考慮すると、家畜生産性を最大にし、乾物摂取量を高めるロールベールサイレージを確保することは非常にリスクをともなっているのが現状であろう。その点トウモロコシは、その地域で確実に黄熟期に達する品種を選択すれば刈取り前に圃場で水分調整が可能であり、またサイロでの個々の品質がバラツクという問題も発生しない。粗飼料の水分含量は乳牛の飼料摂取量に大きな影響をもたらす。驚いたことに欧州の酪農先進国においては1週間に1度サイレージの水分含量を測定し、110日に1回はその測定値をもとに飼料メニューの組み替えを実施している。要するに欧州の酪農家は粗飼料の水分割合の変動が飼料全体のバランスを大きく左右させ乳牛の乾物摂取量に影響をもたらすことを十二分に把握しているのでこまめな分析を怠らないのである。1本のサイロの水分の変動ですらここまで気を使うのである。ロールベールサイレージ個々の品質のバラッキはすなわち乳牛にとっては日替わりメニューともいえ、特に水分の変動はルーメンの恒常性を保つことが難しいと考えられる。

飼料作物草種別刈り取りステージ
による成分値

刈り取りステージ又は刈取り日 TDN NDF ADF
トウモロコシ乳熟初期 65.9 55.7 35.9
〃乳熟中期 66.4 50.5 32
〃糊熟期 65.2 49.8 31.9
〃糊熟後期黄熟期 67.4 43.7 28
〃黄熟期 66.6 41.7 26.7
〃黄熟後期過熟期 64.2 38.7 22.9
チモシー穂ばらみ期 71 56.6 29.7
〃出穂初期 63 61.7 34.3
〃出穂期 60 64.8 38.2
〃開花期 55 70.8 41.8
〃結実期 50 73 43.2
1番草4/10 72 45.6 23.5
〃4/20 69 51.9 29.2
〃5/1 62 63.7 37.4
〃5/13 58 68.3 41.3
〃5/23 57 66.1 40.4
〃6/1 54 71.3 42.6
一番4/10-2二番5/13 58 61.8 37.2
〃4/20-5/23 60 59.5 35.8
〃5/1-6/1 59 59.8 34.6

【酪農家のための飼料特性情報より抜粋】

■ロールペールサイレージのコストと生産性
 
前述したようにロールベールサイレージで家畜生産性を高める自給粗飼料を生産するには出穂前の早刈りで対応する他にない。収量を確保するためには春から晩秋までシーズン中はほとんど圃場に出ていないと目的を達成することは出来ない。一年中天候と刈取りステージに神経をとがらせ、適切で均一な水分調整を実施し素早く梱包ラップしなければならず圃場の単位面積当たりのコストと労力を考えた場合採算の悪い作業を強いられることになる。しかしトウモロコシの場合は、収穫は年1回で(二期作は2回になるが)反当たりの収量は他の作物を圧倒する。ロールベーラーとラッピングマシーンは多くの酪農家が投資した機械ではあるが、ロールベーラーや牧草の比率を下げ、トウモロコシにウエイトをおき、飼料メニューの基幹をコーンサイレージ中心にもっていくことが21世紀に向けた酪農経営の新たな戦略ではないだろうか。