乳価がドウシタ、配合の上げがナンダ!
エネルギー収量アップで乗り切れ!

■時計を持っているフランス酪農家
 かつて本誌でもフランス酪農の技術レベルの高さを紹介した。技術レベルとは平均産乳量の高さや頭数の多さではない。フランスは「与えられた土地からいかに合理的に最大の乳量を出すか」というシステムに関し、どの国よりも優れている。しかも、それは誰にでも簡単にできるシステムなのだ。飼養管理は誰もほとんど基本的に同じやり方である。例えば、デントコーンを乾物率30〜35%のものを飽食させる。そして、ある牛が乾草物13キロのデントコーンを食ったとすると47%粗タンパク入りのサプリメントを2.5キロ、乾草を1キロ食わせると20キロの産乳があることを知っている。これでルーメン内のタンパクと工ネルギーがピタリと一致するしかけになっている。PDI方式と言われるものだ。これ以上の産乳をトライするために更に、粗タンパク18〜20%位の配合を1キロ与えれば2.5キロずつ産乳が可能な仕組みになっている。考え方としては一定の品質(デントコーンが乾物で30〜35%)のものを飽食させて、つまり、粗飼料の乾物摂取を最大にしてその量に応じて(タンパクの)サプリメントでバランスを取る。これが基礎乳量となる。もし、乳牛がスーパーカウでコーンサイレージを乾物20キロも食えるなら、さっきのサプリメントを4キロ近く与えればよい。単純な比率計算だ。
 基礎乳量が出たら、2.5キロの追加乳量を狙って1キロずつさっきの粗タンパク18〜20%位の配合を食わせる。食えなくなったら、やめる。それがその牛の最大乳量ということだ。サプリメントや配合はいかに粗飼料を食わし込めるかがポイントであり、粗飼料の摂取が上がらないサプリメントや配合にはクレームが出る。このやり方は乳牛の持つ潜在的乾物摂取量(すなわち食わせるまで誰も解らない摂取量)を目一杯引き出す、世界で最も進んだやり方なのだ。
だからフランス酪農家はボディコンディションなどほとんど言わない。結果的にどの牛もボディコンディションや繁殖が良くなるやり方だからだ。
 
もし、冷夏でコーンの登熟が遅れ、早刈りをしなくてはならない時、農家は飽食だから水分が多い分、乾物摂取量が上がらないことを経験的に知る。そうするとインラ(国立農業試験場)の提供するコンピユータ情報(インレーションと呼ぶ)でエネルギーの足りない分、大麦やコーンの圧ペンを追加する。つまり、粗飼料の品質が悪いと追加の買いエサが必要で乳量に影響することをインレーションの中身など知らなくても、理解している。フランスの酪農家は、粗飼料の品質・買いエサのコスト、そして乳量、乳質が具体的に解る時計をもっているようなものだ。時計の仕組みは知らなくとも短針や長針で時間が解るようにインラがしてくれていると言う訳だ。日本の酪農家の多くは自ら時計を持たず、エサを売る人に時間を聞いているのが現状ではないか。だから、コストと乳量の関係が具体的に解らない。飽食させないから、粗飼料がどれほど摂取できるか、そしていかに利益に結ぴついているか知らないことが多いのだ。
■工ネルギー収量で所得はこんなに違う
 本誌2月号で粗飼料の基準をTDN生産費だけではないと論じた。TDN生産費で言えば放牧が一番安い。放牧でのコストは安くとも所得は上がらない。生産費ではなく生産性がカンジンなのだ。エネルギー価がダントツのデントコーンでも乳熟期も黄熟期もTDNの率はそう変わらない。しかし、乳量に影響するエネルギー価は黄熟期に刈ったデントコーンでは栄養成分的にデンプンは二七%にすぎないが、エネルギー量としては70%以上で構成している(図@参照)。

図@

コーンの栄養成分

コーンのエネルギー構成比
スターチ(デンプン)が増えればエネルギー価も増す。ゆっくりエネルギー転換する繊維の質はNDFの低さで決まる。
つまり、子実収量(デンブン)が多ければ多いほどエネルギー濃度が高く、NDFの数値が低くなり、乾物摂取量が上がるのである。反対に熟期に違しない乳熟期に刈るとデンプン量が減り、エネルギー濃度が下がり食いも悪く、乳量は落ちる。登熟したトウモロコシの子実は糞に出てしまうという酪農家もいるが、糞に出る以上に収量(デンプン量)が増えるから全体としてのエネルギー価値は上がるのだ。
 品種選ぴはまず、刈取時に黄熟期に達する品種、そして、乾物収量だけでなくエネルギー収量(NEL−乾物当たりどれだけエネルギーがあり、乳量をどれだけだすかの値)の高い品種を選ぶのだ。つまりデンプン量を代表する子実収量の高い品種ということになる。見たところ生収量で見劣りする早生の品種
(3699・セシリア)も黄熟に達してエネルギー収量が高いから10アール当たり晩生の他社A・B品種より500キロの産乳量の差になることが解る。さらにソルガムやチモシーの乾草を粗飼料にした場合の単位面積あたりの産乳量の差は決定的である(図A参照)。

図A 草種・収量・乳量の比較

他社A/Bは熟期が長いから生収量は高くても、乾物収量はほとんど変わらない。
しかし、エネルギー収量がこんなに低いから産乳量は落ちる結果になる。

所得倍増の秘訣、工ネルギー収量を限られた圃場でどれだけ収穫できるかこれを今年の課題にして頂きたい。