低コスト高泌乳にしたければ
粗飼料を飽食させればよい!

■通年サイレージをするから、わからなくなる。
 本誌上でフランス酪農を何度も取り上げた。フランスに限らず、欧州は放牧から酪農をスタートさせている。だから粗飼料は飽食が基本である。粗飼料をギリギリ飽食させてその上に濃厚飼料を加えるというやり方なのだ。日本はそれに反し、耕作面積が少ないので乳量を上げる為にまず濃厚飼料を増やすやり方が一般的となった。粗飼料というネーミングもよくないかもしれない。粗飼料の粗は「粗末」の粗であり、品質はよくなくてもよいイメージがある。
 一方、濃厚飼料は名前の通り濃厚で、「エネルギーと栄養が満点」のイメージを与えてしまう。これが間違いのもとなのだ。
 確かに「濃厚飼料を多給して乳量を上げることは可能である」。
しかし、濃厚飼料を多給すれば必ず乳量が上がり、儲かるかと言うと全然ちがう話であることに気づいて欲しい。
粗飼料を飽食させると何が解るか−
 
まず第一に粗飼料の作物や刈取時期、切断長、サイレージ発酵、乾草かサイレージかによって大きく乳牛の乾物摂取量が変化することが解る。日本では長い間、平衡給与で通年サイレージにしなさいと念仏のように言われて来た。エサの種類を変えるからいけないというものだ。通年サイレージで飽食できるほど飼料作物の圃場をもっている酪農家はほとんどいない。だから通年サイレージ、イコール、制限給餌になってしまう。 自給飼料を一日乾物で5キ口しかやらない酪農家は、本来なら乾物で13〜15キ口も食い込めるデントコーンもせいぜい7〜8キ口しか食い込めないチモシーやスーダンの乾草やロールも同じ粗飼料としか思わないのも当然である。
 
乾物摂取量を最大にすることがその乳牛の潜在的産乳能力を最大にすることなのに、粗飼料の作物や質によって、それが劇的に変わる事を知らない結果となる。
 だから、濃厚飼料や配合やビタミンや添加物が乳量や利益の源泉と思いがちである。ほんとうに粗飼料の質と乳量の関係や粗飼料に合わせたタンパクとエネルギーのバランスを知っている人は制限給餌の通年サイレージなんかしない。



制限給餌をするとデントコーンも
ロールも同じ粗飼料と
考えがちだ。
この格差は驚くほど大きい。
■例えば、デントコーンならデントコーンをなくなるまで飽食させる。
 
なくなれば、他の粗飼料、イタリアンならイタリアンをやる。又、なくなれば良質のアルファルファの購入粗飼料を飽食させる。夏の暑い時期に暑熱対策としてデントコーンをとっておくというのも悪くない。これを実行すると、
 
@いかに粗飼料の質が乾物摂取量、つまり乳量、繁殖に影響するかが解る。
 A自給粗飼料が切れた時に安定したポディコンディションを保つために良質の購入粗飼料を確保することが、どれだけ大変でカネがかかるかが解る。
 B粗飼料をパワーアップさせるために、いかにバランスよく濃厚飼料を与えるかが大事ということを知る。

 それにしても目本の配合飼料は粗飼料のパワーを最大眼に引き出す為に作られているとはとても思えない。本稿で何度も言っているが、フランスの組み合わせはデントコーン対サプリメントは5対1の比率である。
■乳価の競争力は、だから、配合の競争力でもあるのだ。
 
つまり、コーンサイレージ13キロに対し、サプリメント2.5キロ、乾草1キロを加えて基礎乳量を20キロ出すことになっている。このサプリメントのCPは47%だが、これは尿素入りのしかもホルマリン処理をして、バイパス率50%にパワーアップされたものだ。中身が濃いからその分、費用効果が高い。表@はフランス国立試験場インラの乳量・乳脂肪・エネルギー量と乾物摂取量を示したものである。僅か1キロ未満の摂取量の違いで乳量と乳質がガラリと変化する事がよく解る。だから、粗飼料をどれだけ、食わし込めるか、又、食わし込める質の高いもの(低NDF・高エネルギー)を作れるかどうかが高泌乳でありながら逆にコストを急低下させるポイントだということがわかるだろう。

表@ 体重600sの泌乳牛の乳脂肪・乳量・乾物摂取量の関係
 

乳脂肪(%)
   
  3.2 3.6 4.0 4.4 UFL* **
乾物摂取量s







3.0 2.5 2.5 2.5 6.1 11.0
5.5 5.5 5.0 4.5 7.2
8.5 8.0 7.5 7.0 8.3 15.0
11.5 10.5 10.0 9.5 9.4 13.4
14.0 13.5 12.5 12.0 10.5 14.2
17.0 16.0 15.0 14.0 11.6 15.1
20.0 18.5 17.5 16.5 12.7 15.9
22.5 21.5 20.0 19.0 13.8 16.7
25.5 24.0 22.5 21.0 14.9 17.6
28.5 26.5 25.0 23.5 16.0 18.4
31.5 29.5 27.5 26.0 17.1 19.2
34.0 32.0 30.0 28.5 18.2 20.1
37.0 34.5 32.5 30.5 19.3 20.9
40.0 37.0 35.0 33.0 20.4 21.7
45.5 42.5 40.0 37.5 22.6 23.4

泌乳牛の体重が100s増加した時の調整
0.6 0.8〜1.5

* UFL=0.017TDN-0.29
** 良質なデントコーンがベース。
*** 同じ20sの泌乳でも赤の部分と青の部分では乾物摂取量が0.8sしか違わないのに乳脂肪が3.2%から4.0%に増える。

デントコーンだけでこれだけの乳量と乳質がとれる。
あとはどんなサプリメントでバランスをとるかで最終乳量が決まる。