草-牛-乳生産を知ってキミは所得率5割を目指せ!

■北海道大学・畜牧大系学講座の意味
 乳価は下がる。飼料代は高騰する。こうした時代に、明日の酪農に関して明確な「経営戦略」を示す人が何人いるか。日本の畜産学会の硯学である北博道大学朝日田康司名誉教授(日本学術会会員)と話す機会があった。氏曰く「日本では草を知っている人は牛を知らない。牛を知っている人は経済を知らぬ。だから我が北大では『飼養管理学講座』とか『草地学講座』なんかやめちゃったんだ。そして『畜牧大系学講座』にしたんだ。つまり酪農というのは、草−牛−乳生産の中での経済学なんだ。牛だけ、草だけの専門バカを育てないということだ」と。
 本稿で何度も指摘しているように、自給飼料や粗飼料の価値を「TDN1キロ当たりの生産費、または購入コスト」と論じる人が圧倒的である。朝日田先生の論を待つまでもなく、それが乳生産にどうしたというのだ。収量はあっても、刈り遅れた牧草やロールで高泌乳牛の乳を出させると言うのか。TDNそのものは、家畜が消化可能な乾物量の比率だから、木クズもデントコーンもTDNはさほど変わらない、と言えば驚くだろう。
TDN生産費を言う人に、木クズで牛が飼えるかと質問してみたい。


酪農は、草-牛-乳生産の経済学だ!

粗飼料は、乾物摂取量が
上がるかが決め手!


■酪農は因果関係に時間がかかるだから間違う。
 朝日田氏の畜牧大系学の意味は深い。何故なら、草地から飼料としての自給飼料作りには数カ月から数年かかる。そして泌乳のサイクルは400日を超える。草−牛−乳生産のサイクルは長い。だから、草地のパフォーマンス(粗飼料の質)がどのようにして乳量にハネかえるかの、経済的な因果関係をたどるのは、易しいことではない。
 エサの栄養や価格について熟知しているハズのコンサルタントですら、とんでもない間違いをおかす。「デントコーンの栄養は、スーダンの乾草とコーンの圧ぺんで代用出来る。アルファルファサイレージは、大豆カスとチモシーの乾草で代用できる」と考えて、買いエサとサイレージの価値を価格だけで比較してしまう。しかも、現場で実践してしまうからコワイ。
 こうした、乳牛のルーメンを無視した単純な算数的経済学に、酪農家や現場の指導者ですら、コロリと説得される。
栄養的に価値も価格も同しでも「だけど食えるのか」という基本的問題、つまり「乾物摂取量の上がる粗飼料」という乳生産の最重要ポイントを抜きにしている。
■自給飼料は買いエサでは追いつけない品質のものを作れ。
 刈り遅れた牧草やロールを作って「作業が楽になった」と言う酪農家に言いたい。「ナゼ、そんな質の悪いものを作るのか。スーダンの乾草を買えばもっと楽ではないのか」と。
 酪農が養鶏や養豚と同じようにインテグレーション(大資本集中型大規模農場)にならないのは、乳牛は粗飼料の質(量ではない!)に大きく影響されるからだ。
楽をしても安くても、質の悪いものを作って何が自給飼料か。指導者も猛省すべきである。低コスト生産はモットモである。しかし、現実には誰も粗飼料の品質を言わないから、ガリガリにやせた高泌乳牛から淘汰されているではないか。アルファルファは日本では難しい。だから自給飼料はタンパクを追いかけるよりも、エネルギーの量(スターチ)とNDFの低さ、それがあって、初めて発酵品質が決め手になる。サイレージの匂いだけで品質を判断するのはもうやめよう。
 デントコーンサイレージはNFC(非センイ性炭水化物)であるスターチと、ルーメンエネルギーとなる繊維(NDF)が半々につまった天然のTMRサイレージだ。デントコーンの給与を徐々に増やし、買いエサの高騰と低乳価を乗り切れ。今でも所得率5割は、飼料畑さえあれば難しくない。何度も言う。粗飼料は、質なのだ。


エネルギー量があり、NDFが低くて、発酵が良ければバッチリ