|
我々はエナジーコンセプトを通じ、一貫してデントコーンの優位性を説いてきた。そこで今回は、コーンサイレージを多給することで乳飼比を30%以下にし、高所得を実現している酪農家を紹介しよう。
■面積拡大、コーンサイレージ多給で乳飼比30%以下。
栃木県の町井幸衛さんは経産牛33頭、初妊・育成牛23頭を飼養している。圃場面積は年々拡大し、今年はデントコーン面積をさらに拡大し13haを予定している(表1)。とにかく近隣のある程度条件のそろった畑ならどんどんデントコーンを作ってしまうのである。プランターやハーベスターを所有しているのであれば、作れば作るほどコーンサイレージ1s当たりのコストが安くなるからだ。そのため将来的には作付けを20haまで増やし、コーンサイレージを飽食にしたい意向だ。乳牛は搾乳時以外はなるべく外に放し、牛舎内労働を浮かせた分、園場での作業時間をとれるようにした。
|
町井さんの自給飼料作りの基本は「牛がたくさん食い込める粗飼料を確保すること」であり、それが購入飼料費を大幅に削滅し、乳飼比30%以下を実現している原点でもある。 |
〔表1〕町井牧場のデントコーン作付け面積の推移(ha)
|
93年 |
94年 |
95年 |
96年 |
97年 |
|
6.5 |
8.0 |
10.0 |
11.5 |
13.0 |
|
■コーンサイレージを多給して四変が越きるなんて大ウソだ!
よく「コーンサイレージをたくさんやると四変になるからな」ということを聞く。分娩後に発生する四変は、泌乳前期に不足する栄養分を、自らの筋組織をも動員して補うため、第四胃を吊っている筋肉が消耗され、不安定になった四胃が変位を起こす。町井さんは「乾乳時に体重を落とざずに食い込める腹を作ることが泌乳の立ち上がりで乾物摂取量を高め四変を発生させない要因だ」と語る。つまり食えない腹を作ってしまうことと、バランスの悪さが四変の原因であり、決してコーンサイレージが悪い訳ではないのである。「腹一杯食わすことが基本だね」。「コーンサイレージをたくさん給与して四変になるのなら、うちの牛みんないないよ」と言う町井さんであった。
■コーンサイレージ多給のメリット。
|
町井さんは、コーンサイレージを一日一頭当たり30〜35s給与している。乾物換算すれば9〜10.5sなので、乾物摂取量の半分近くをコーンサイレージで補っている。その他のメニユーは表2の通りで、経済性を加味しながらバランスをとっているのは他の酪農家同様である。ただ大きく違う点はコーンサイレージの庄倒的な給与量である。 |
〔表2〕 給与メニュー
※泌乳中期 乳量30s 体重620s
|
飼料名 |
給与量(s) |
|
コーンサイレージ(DM30%) |
35.0 |
|
アルファルファ乾草(プレミアム) |
3.0 |
|
スーダン乾草 |
0.2 |
|
ヘイキューブ |
2.0 |
|
自家配 |
8.0 |
|
コーンサイレージ多給のメリットは何といっても購入飼料費が大幅に削減できることだ。町井さんはコーンサイレージ主体のTMRを給与するのがべースだが、45s以上出している牛にはトップドレスでサプリメント1s上乗せすることで4s以上の乳量アップを計っている。
乳質に関しては、とりわけ乳脂肪が高い。これはコーンサイレージの多給で、ルーメン内で生成される揮発性脂肪酸のうちプロピオン酸と酪酸の比率が高まるからであろう。このように乳成分値を高レベルに保てるのもコーンサイレージの特性である。
また、経営の収支を大きく左右する要因の一つに繁殖の問題がある。酪農の場合、極端にいえば「今年タネがとまらなければ、来年は儲かりませんよ」と言っても過言ではない。町井さんの牛群は、卵巣や子官の状態が非常に良く、種付けも一発でとまる牛が多い。食っている牛は疾病も少なく、発症しても軽度で済む。必然的に、長命で生涯乳量を高め効率良く経営を回転させることができるのである。
町井さんは乾物摂取量を高めるために、牛を繋いでいようが放していようが、牛の目の前には常にエサがあるようにしている。夏は多回給餌にし、飼料の傷みの少ない冬場は四・五日に一回しか飼槽掃除はしない。飼槽のエサはこまめに押してやり、エサが少なくなれば足してやるという方法をとっている。「毎日が乾物摂取量へのチャレンジなんです」と明るく語る町井さんであった。 |
 |
|
ここがコーンサイレージ多給の町井牧場。 |
 |
コーンサイレージ主体のTMR
毎日が乾物摂取量へのチャレンジだ! |
|
■未来戦略にコーンサイレージありき。
日本の酪農は低乳価、穀物相場の高騰あるいは円安の影響により、飼養管理そのものに変革が求められてくる。今重要なことはガット・ウルグアイラウンド以降を見据えた未来戦略を持った経営である。町井さんは来るべく低乳価時代に対し、コーンサイレージ多給でエナジーコンセプトを既に実践している。今後厳しい競争を勝ち抜くための具体的な方法論として、コーンサイレージの多給がますます重要な経営戦略の一つになってくる。
 
|