牛繁殖経営でもエナジーコンセプトは
生かされている!
 比較的多くのエネルギーを必要とする乳牛ですら、コーンサイレージを給与しすぎると太るとか、種付きが悪くなるという誤った風潮がある。まして乳牛ほどにエネルギーを必要としない繁殖用和牛では、なおさらその傾向が強いのが現状だ。しかし、現実にはとんどコーンサイレージだけのエサ給与で低コスト経営を実践している和牛繁殖農家がいるのだ。今回はその事例を紹介しよう。
■圃場面積拡大を機に脱サラ専業農家へ。

 宮崎県北諸県郡高城町の古川重久さんは、父親が山間部で和牛繁殖経営を営んでいたが、10年ほど前に近隣農家が離農したため、その畑を譲り受けて面積を7.5haに拡大した。その際「これなら自給飼料主体で儲かる経営ができる」と確信し、仕事を辞めて専業で和牛繁殖経営を受け継いだ。現在は、自分で電柱廃材を便って低コストで牛舎を増築し(氏は建築関係の仕事をしていた)、繁殖親牛を100頭まで増頭しており、圃場面積7.5haは、すべてトウモロコシの二期作をしている(二期作目はソルゴーとの混播)。

ほとんどコーンサイレージだけで低コスト経営を実践している古川さん

■和牛でもコーンサイレージ多給が儲けの秘訣だ。

 古川さんの給与メニユーはコーンサイレージがほとんどで、繁殖親牛一日一頭当たり15〜16キロ給与している。他にはワラを長いままで1キロ弱、大麦外皮1キロ弱、麦ヌカ1キロにビタミン・ミネラルのサプリメントである(表1参照)。  サイロは半地下式のコンクリート角サイロもあるが、1回に1トンを越えるサイレージを取り出すため、角サイロでは労力がかかりすぎる。
(表1)給与メニュー(繁殖親牛1日1頭当り)
飼料 給与量 給与回数
コーンサイレージ 15〜16s 1日1回
稲ワラ(長いまま) 0.7s 1日1回
大麦外皮 0.75s 1日1回
麦糖 1.0s 1日1回
ビタミン・ミネラル 少量 1日1回

そのため今は50メートルと80メートルのバンカーサイロに詰め、タイヤショベルで取り出す。そして、二条刈コーンハーベスタによる刈り取り、タイヤショベルでの鎮圧、ユンポ(中古購入)による覆土等を一人でこなしている。
 コーンサイレージは1日おきに取り出し、エサの給与は一日一回と極めてシンプルだ。このやり方で、
親牛の1日1頭当たりの工サ代は40〜50円程度と非常に低コストで、高い所得率を維持しているのだ。他の農家には市販の和牛繁殖用混合飼料(TMR)を利用している人もいるが、古川さんいわく「そんなコストのかかるエサを便っていたら、市場の相場で子牛価格の変動する和牛繁殖経営ではリスクが大きすぎる」とキッパリ。
 また、以前ソルゴーを食わせていた頃は、他の濃厚飼料が余分に必要だったが、コーンサイレージにしてからは、その分を削ることができるようになった。購入飼料代が減って、その付加価値の高さを痛感している。
 「コーンサイレージを15キロ食わせても種が付かないなんて事はない。それは、日頃牛をちやんと見ていない人のいい訳に過ぎないんじやないの」と、古川さんはいう。実際、古川牧場の牛は太ってもいないし、繁殖成績もまったく問題ない。さらには、古川さんの他にもコーンサイレージ20キロに大豆粕0.3キロでエネルギーとタンパクのバランスを取り、あとはワラとフスマだけで何の問題もなくやっている和牛繁殖農家がいるのも事実なのだ。


1回の取り出し量が多いので、
バンカーサイロは最適。


コーンサイレージ主体のエサは
1日1回給与。

■生き残り戦略は酪農も和牛繁殖も同じ。
 
来るべき自由化を前に、低乳価、購人飼料の価格高騰、子牛セリ価格の不安定、後継者問題など酪農・和牛繁殖経営ともに不安材料ばかりが目立っている。これからますます厳しい競争を強いられるのは問違いないであろう。しかし、逆にやり方次第では、大きなテャンスでもあるのだ。これまでの号でも繰り返し述べている通り、自給飼料を増やして限られた土地を最大限に活用し、利益率の高い経営を実現する事が最善の策だ。ただ、それを実現できる自給飼料は、グラスでもソルゴーでもなく、コーンサイレージなのだ。コーンサイレージ多給方式が生き残りの大きなカギを握っているのは間違いない。