改良される乳牛、進化するデントコーン 30年前、乳牛の1日当たりの乳量は15キロにも満たなかったが、今日では遺伝的改良が進み、30キロは珍しい時代ではない。昔は「乳牛は反蜀動物だから十分なセンイを与えれば問題ない」と言われ、事実酪農家はそれほどエサの質を気にしなくても乳牛を飼うことができた。
しかし現在のような高泌乳牛では、エサの質、とりも直さず粗飼料の質が非常に重要となっている。乳牛の改良に合わせ、粗飼料の質を改善しなければ今日的課題である「高泌乳牛のエネルギー不足」は解決しない。
■なぜエネルギーが足りないのか。
今日のような高泌乳牛は、泌乳初期に「必要とするエサが食い込めないのに、乳が出てしまう」という状況にしばしば陥る。乳牛の改良スピードに飼養管理が追い付いていないのだ。
図1 乳量とエネルギー要求量の変化
図1に示したように、30年前と今日の乳牛を比較すると、ルーメンの大きさは変わらないのに、今日の乳牛では産乳と維持の合計で約1.5倍のエネルギーが必要となっている。この高いエネルギー要求に応えるため、濃厚飼料でエネルギーをカバーするような飼養管理が横行しているのだ。また、センイの絶対量(NDFの総量)を飼養標準に合わせるため、現実には質の悪いチモシーやロールを食わせているのだ。多くの人は、これがエサのコストを上げ繁殖障害や疾病を多発させ、経営の効率を大きく低下させていることに気付いていない。
限られたルーメン容積に、いかにしてエネルギーの高いエサを食わせ込むか、つまりルーメン機能を損なうことなく消化率の高いセンイ(低いNDF)を食わせるかが重要なのだ。これには高品質のデントコーンサイレージがピッタリだ。
■進化するデントコーン32K61
図2 3358の後継新品種32K61。
3358と比較して、
乾物収量10%アップ。
産乳エネルギー13%アップ今から15年前「3358」はデビューした。この品種だけで全国の2割以上を占める時期もあり、パイオニアの顔ともいえる品種だった。当時多くの品種が倒伏や耐病性に問題をかかえるなか、3358は見事にこれらの問題をクリアーしたのだ。しかしこんな品種でもいつか引退の時がくる。これはただ単に古いからではなく、今日の高泌乳牛の要求に応えるためなのだ。一般的に品種改良の世界では収量と品質は相反するもので、収量をあげようとすると品質は下がる。3358の後継新品種「32K61」は、この問題を克服し、乾物収量は3358の10%アップ、単位面積当たりの産乳エネルギー(NEL)もかなり改良されており、乳量も13%アップだ(図2)。
また、32K61の草丈は3358より約5%、セシリアより約10%高く、サイレージには魅力的な草丈だ。しかも耐久伏性が高く、東北から九州まで広く適応する。つまり、32K61は3358のスケールアップした品種なのだ。
■ルーメンからみた品種選抜
今でもデントコーンの品種選抜には単に生草・乾物収量やせいぜいTDN収量などの情報だけで行われている。エサと乳牛と乳量は直結しているにもかかわらず、畑の収量性のみで品種が選ばれ、乳牛の生理的要求や質など全く考慮されていないのが現状だ。しかし、これからは乳量や牛からみて作物や品種を選択する時代だ。
表1 全国50ヶ所の農家圃場での収量試験
品種 生草
収量乾物
収量乾物率 NDF ADF 粗タン
パク粗センイ デン
プン消化率 NEL 期待
乳量kg/10a kg/10a % % % % % % % Mcal/kg kg/10a セシ
リア5,594 1,629 29.5 44.7 24.1 7.4 22.9 33.6 68.6 1.52 2,342 32K61 6,060 1,752 29.1 46.3 24.8 7.8 23.4 30.1 69.1 1.50 2,486 他社125日 5,960 1,514 25.4 48.8 27.6 7.2 24.6 29.2 66.7 1.42 2,070
注:他社125日は10ヶ所のみ
表1は97年にパイオニアが全国50ヶ所で行った品種の比較試験の結果を示している。他社125日品種は、一見収量は同等にみえるが、ガサ収量だけで産乳エネルギーが低く結局、乳はでない。またNDFは高く、乳牛は食い込めず、高泌乳牛には適さない。今年はデントコーンの質もみで品種を決めようではないか。ルーメンからみた品種選抜、それはパイオニアの品種なのだ。