デントコーン栽培におけるリスク管理
〜安定生産のための品種選抜と栽培のポイント〜

 この冬は全国的な暖冬傾向が報じられている。昨年来のエル・ニーニョ現象も気になるところだ。春の農繁期を前に「今年のデントコーンの生育は大丈夫かな」と心配される方も少なくないだろう。作物は天候をはじめとする環境要因によってしばしば生育が左右され、時にはそれが重大な被害となって経営に影響する。これはもちろんデントコーン栽培でも例外ではない。
 期待する収量と品質のサイレージを確保しようとするなら、環境要因によるダメージを最少にするための対策は欠かせない。今回は生育・収量に特に影響の大きい問題を選び、その対策のポイントを取り上げてみたい。

■冷害年に欠かせない早生品種
グラフ1

乾物率は積算温度で毎年変わり収量・品質に影響する。リスク回避には熟期の異なる品種の組み合わせが必要だ。

写真1 ノルダ

確実な登熟が得られる早生品種は
リスク管理に不可欠だ

 過去5年間の帯広における生育期間の積算温度(毎日の平均気温を積算した値)と当社の試験圃場における90日クラス品種「ディア−HT」の収穫時の総体乾物率および収量をグラフ1に示した。収穫時の乾物率と積算温度は密接に関係しており、年次差が大きい。この場合、二月号で指摘したように収穫適期(乾物率30%前後)に達していないトウモロコシほど子実の少ない、エネルギー収量が劣るサイレージとなり、経済的にも大きな損失を生む。こうした天候の影響を最小限に食い止める対策は何か。 もし、今栽培している品種が毎年恒常的に収穫適期に達しないのなら、明らかにもっと早生の品種に切り替えるべきだろう。また、年によって適期に達したり達しなかったりする場合なら、従来の品種に熟期のより早い品種を組み合わせて危険分散を図るべきだ。
 品種を早生にすると収量を心配する人もいるが、例えばパイオニアの75日クラス新品種「セミラ」や8O日クラス「ノルダ」(写真1)なら、乾物収量は従来の80-85日クラスに匹敵し、しかも寒冷年に強い確実な豊熟を特徴としている。サイレージの安定生産のためにはこうした品種は、今や欠かせない存在だ。

■倒伏を防ぐための栽培管理

表1 倒伏を防ぐ一般的な対策事項
@適正栽植本数を守る。
A完熟堆肥の投入、適正な施肥
B耐倒伏性品種
C深起こしの実施
 倒伏の発生は収量減、子実の豊熟のばらつきや遅れによるサイレージの品質低下をもたらす。それだけに品種の選定には誰もが慎重になるところだが、適正な栽培管理もまた重要なことを忘れてはいけない。倒伏防止のための一般的な対策を表1に示したが、特に注意したいのは、栽植密度と施肥の問題である。

 品種にはそれぞれ適正な播種密度が示されているが、実際には適正範囲を超えて植えられることが少なくない。種子サイズにあった、適正な播種板を用い、常に播種量をチュックすることが肝心だ。また水捌けの悪い粘土地などでは播種密度を基準より低く設定することも必要である。近年トウモロコシ畑への堆肥の投入が増えているが、未熟堆肥を大量投入した場合、地温の上昇する夏期になってから無機化するため、この時期急速に成長するトウモロコシが過剰に窒素を吸収し、倒伏の危険性が増大する場合がある。
 「どうも近頃開花頃に倒伏がある」あるいは、「妙に青々と茂っている」という方は、堆肥を含めた堆肥量をもう一度チェックして欲しい。

■すす紋病と抵抗性品種

写真2 すす紋病の初期症状
(中央部長紡すい形の斑)

写真3 すす紋病が広がったデントコーン畑

 生育後半から病斑が広がり、ひどい場合は収穫前に茎葉が枯れ上がってしまうすす紋病は既に汚染地域では収量、品質に大きな影響を及ぼしている(写真2・3)。畑ですす紋病の発生がもし確認されたなら、翌年からの品種選択は慎重に行いたい。この病気に対する品種の抵抗性には大きな差があるのだ。
 パイオニアは90日クラス「ディア−HT」(すす紋病に強い抵抗性を持つ遺伝子を持つ)をはじめ、すす紋病に強い品種の選抜に力を注いできた。被害を未然に防ぎ、汚染畑を広げないためには抵抗性に優れたパイオニア品種を是非活用して欲しい。
 デントコーンは酪農家にとって重要な投資のはずだ。「天候が悪かったから」「たまたま強風が吹いたから」とあきらめるのは早い。しっかりとした分析と対策があればリスクは最小限に押さえられ、利益はより確実なものになるのだから。