省力化、不耕起栽培のススメ わが国の基本的農業技術は稲作を出発点としている。古くから土を深く耕し、細かく砕くことが作物の生育に良いとされ、飼料作物においても耕起は不動の前提となってきた。しかし、今日耕起が必ずしも農業生産上の必須の作業だとは考えられなくなっており、アメリカではすでにトウモロコシの約2割が不耕起で栽培されている。わが国でも小規模ながら不耕起栽培の研究が行われ、その有効性が確認されてきたが、長い耕起の習慣から抜けだせず不耕起法の普及には至っていない。しかし、この方式をデントコーン作りに取り入れれば、雪解けの遅い北海道・東北でも播種の遅れを心配なく作付け可能となるし、関東周辺では麦作後ただちにデントコーンを作付けできるだろう。また、九州では二期作栽培の大幅な労力軽減が期待できる。不耕起栽培は惰農ではなく、研究や新たな技術に裏打ちされた有効的な栽培法なのだ。
■労働と生産性の革命。
不耕起栽培は全ての土地でできるわけではなく、粘土質が強く水が溜まるような条件には適さない。しかし、水はけの良い土地さえ選べば(我が国の畜産の多くは水はけの良い火山灰地帯に分布しているが)慣行法とほぼ同等の生産が期待できる。
この方式の特長は、
@耕起をしなくとも播種できるため、作業時間及び労力の大幅削減可能
A土壌の流亡を著しく軽減し、地力を維持する
B今まで耕起できなかった傾斜地でも、デントコーンが栽培可能となる
−と言える。一方考慮すべき点として、
@残根や雑草があっても播種できる特別な播種機が必要となる
A寒冷地においては慣行法と比較すると、やや地温上昇が遅れるため初期生育の良い品種が必要となる
Bより効率的な雑草防除が必要となる
−等が上げられる。しかしこれらの点については、いずれも克服されており今日では大きな問題とはならない。
■不耕起栽培はカンタンだ
写真1 不耕起プランターによる播種
残根や雑草は播種の支障にはならない。
播種と同時に除草剤の散布も行っている。昨年、我々は九州でデントコーンの実規模での不耕起栽培に挑戦した。九州では、デントコーンの二期作栽培が広く行われているが、サイレージの収穫と平行して二期作の播種準備をしなければならず、過重な労働となり播種が遅れたり、あるいは二期作栽培そのものをあきらめる人もいる。
97年8月、酪農家の春播きデントコーンの収穫直後、圃場を二分割し半分を不耕起法、残り半分を慣行法で二期作トウモロコシを播種した。写真1に示すように、圃場は多くの雑草とデントコーンの残根に覆われ、通常のプランターならとても播種できるような状態ではなかった。使用した播種機は不耕起用の部品を付けたプランターに、従来のものと比較して4分の1の水量で除草剤を散布できるノズルを付け、播種から除草剤散布が一工程でできるように改良したものを使用した。
■大幅な作業時間の短編と驚くべき収量!
表1 慣行法と不耕起法の比較
播種方法 作業時間(分/10a) 収量(kg/10a) ロータリー耕 播種 除草剤 計 生草収量 乾物率 乾物収量 慣行法 38 26 11 75 3,988 16.9 674(100) 不耕起法 15 15 4,608 16.3 751(111)
不耕起法と慣行法の生育状況
全く差は見られない結果は表1に示した。慣行法では一連の作業を終了するのに10アール当たり75分を要し、そのうち大半を耕起に費やしている。耕起がいかに時間を食う作業か良く分かるだろう。これに対し、不耕起法ではわずか15分で全ての作業が終了し、心配した雑草やコーンの残根は全く播種の支障にならなかった。何と、5分の1の作業時間なのだ。また、収量についてみると、不耕起法は慣行法と比較して、11%高いだけでなく、生育期間を通して何等支障は見られなかった。不耕起栽培の有効性が実規模の調査で再確認された次第だ。
スラリーの生育期散布
デントコーンの生育の
支障にはならない