自給粗飼料で明日の経営戦略を拓け!
〜トウモロコシサイレージ多給の経済効果を検証する〜


「低コスト高泌乳の経営を目指すなら、粗飼料は飽食させるべきだ」。
そして、
「最も価値を生む粗飼料は高エネルギーのデントコーンサイレージである」。
と、本欄では繰り返し主張してきた。これに対し「実際の経営上とのくらいプラスになるのか?」あるいは、「デントコーンばかりこんなに食わせて本当に大丈夫なのか?」という疑問を持つ方もいるだろう。
 今回は、昨年ホクレン畜産実験研修牧場(訓子府町)で行われたトウモロコシサイレージ多給(飽食)による産乳性および経済効果を検討した試験結果を紹介しながら、こうした疑問にお答えしてみたい。



■トウモロコシ飽食VS制限給与
 トウモロコシサイレージは牧草に比べて収量性が高く、調製が容易で産乳性にも優れるとされている。その一VS制限給与。方、「牛のために良くないからトウモロコシサイレージの給与は15キロまで」という根拠のない限界説もある。はたして、この説は正しいのだろうか?
 試験では、泌乳牛12頭(平均体重640キロ、平均分娩日数41日、平均前産乳量9,574キロ)を用いて、トウモロコシサイレージを飽食させた場合(多給区=乾草1キロ+トウモロコシサイレージ飽食)と制限給与して牧草サイレージと併給した場合(併給区=トウモロコシサイレージ現物15キロ十牧草サイレージ飽食)の乳生産と経済性を比較した。

尚、給与されたトウモロコシサイレージは黄熟期に、牧草サイレージはチモシー、赤クローバー混播牧草を出穂期に収穫し、それぞれホクレン畜産実験研修牧場のスタックサイロで調製されたものである。

■乳生産・飼料費の比較
 乳生産と飼料費を比較したものが図1だ。トウモロコシサイレージを飽食させた場合も、制限給与して牧草サイレージと併給した場合も、泌乳牛の採食量はほぼ同じで、乳量・乳成分にも有意な差はない。
 飼料費の比較は、農林水産省の生産費調査を基に計算した。トウモロコシの乾物収量は牧草の1・8倍あるが、1キロ当たりの生産費は5円高い。これらの結果から算出された1日1頭当たり、生乳1キロ当たりの飼料費は、併給区の方が若干安いという結論となっている。
【図1】 トウモロコシサイレージ多給と制限給与時の乳生産と飼料費の比較

■圃場収益性を比較すると。
 
しかし視点を変えて、畑の面積当たりの収量性がどのくらい違うかの比較では、違う結果となった。トウモロコシは収量性が牧草の1.8倍も高く、トウモロコシ多給区の面積当たり飼養可能頭数は、併給区に比べて約1.4倍も高い(ヘクタール当たり2頭)。飼料費は余計にかかるものの、生産される乳量も多いために、ヘクタール当たりの収益差は、実に35万9千円にも達している(表1)。

【表1】 圃場からの収益性の比較(北海道平均の試算値)
  トウモロコシサイレージ+牧草 トウモロコシ
サイレージ
飼養可能搾乳牛頭数(頭/ha) 1.49 2.13
産乳可能量(kg/ha) 21,808 30,321
生産可能乳代(千円/ha) 1,636 2,274
飼料費合計(千円/ha) 528 807
飼料費差引乳代(千円/ha) 1,108 1,467

■試験結果が示す3つのポイント。
 試験結果から我々が学ぶべきポイントは3つある。
 第一は、良質な自給粗飼料は、購入飼料費を確実に減らし、大きなコストダウンにつながるということだ。粗飼料が良質であれば、グラスでもデントコーンでも採食性は高く、乳量にも差がない。
 第二のポイントは、トウモロコシの圃場収益性の高さだ。多頭化による規模拡大が進む中、限られた面積から自給粗飼料を生産し、最大の利益を得るためにはトウモロコシに勝るものはないことを、この試験結果がはっきりと示している。
 第三のポイントは、トウモロコシサイレージの給与量は、一部で言われる現物で15キロ程度が決して上限ではないということだ。泌乳牛のトラブルを恐れてトウモロコシサイレージの利用を制限する方も多いが、要はタンパク質、カルシウム等のミネラル不足をきちんと補い、飼料全体のバランスが取れているかどうかなのだ。

■トウモロコシを経営にどう活かすか。
 
個々の酪農経営は、置かれている地域の環境、経営形態、経営規模によって当然異なる。全ての酪農家にこの試験結果をそのまま当てはめることは困難かもしれない。しかし、1つだけはっきりしていることがある。もし、あなたがトウモロコシの栽培可能な飼料畑を持っているならば、トウモロコシの作付け面積を可能な限り広げることが利益を生む近道だということだ。トウモロコシを経営にどう活かすか、活かしきるかが、未来のあなたの経営を大きく左右することになるだろう。