コーンサイレージが低コスト生産を実現
〜石川県河北潟で実施しているエナジーコンセプトの実例〜

 北陸石川県河北潟では、2年前から本格的にトウモロコシの作付けが始まった。購入飼料費削減のため、従来のグラスサイレージ主体の給与体系からウエイトをトウモロコシに移したのである。
 今回は、彼らがなぜ、トウモロコシを経営の根幹に位置付け、それに伴いどのような成果を上げているのかを追ってみた。

■配合の給与量が減った。
【図1】

高エネルギー、低NDFのトウモロコシだからこそ配合飼料は少なくて済む。
 マツダ牛群管理サービスの松田獣医師は、河北潟で12戸の酪農家約1,000頭を対象に独自の牛群検定を実施している。
 図1は河北潟でコーンサイレージとイタリアンサイレージを別給与した際、同じ出荷乳量を得るために給与した配合飼料の使用量を比較したものである。コーンサイレージ給与時に1,500キロの出荷乳量を得るためには500キロの配合を給与するのに対し、イタリアンサイレージ給与時には20%増の600キロの配合を必要としていることがわかる。飼料設計上、適正なNFC含有率は乾物中おおむね35%くらいに設定するが、グラスは低NFC、高NDFであるためNFCを最適値にするにはNDFが制限要因となる。
 つまり「グラスは食わせたいけど食えない。食えないから栄養が不足する。食えないものは余る」ということになる。結局、グラスサイレージはNFCが低い分、配合飼料で補わなければならずコストダウンには程遠い。
 飼料基盤が整備されているなら間違いなく高エネルギーが得られるトウモロコシを作らなければならないという結論だ。


■TDN収量だけで語るな。低コスト生産にはNFC収量だ。
【図2】

NFC自給率を高めることが低コスト実現へのキーポイント。
 NFC(非繊維性炭水化物)はデンプン、糖、ペクチンから構成され、ルーメンでの分解性が非常に高い炭水化物である。NFCは能力の高い泌乳牛のルーメン微生物にとってのエネルギー源であり、飼料タンパクを多量の菌体タンパクに変換するために不可欠なものである。
 図2は河北潟でのNFC自給率を示したものである。河北潟ではイタリアンサイレージを給与している際のNFC自給率は平均7.5%、コーンサイレージ22.1%である。一方、同じデータをTDN自給率で表わすとイタリアンサイレージ11.4%、コーンサイレージ19.1%となり、NFC自給率はど大差はなくなる。
 しかし、従来用いられてきたTDNだけの概念ではなく、NFCという新しい視点で自給飼料のエネルギー.評価をより正確に捉え、河北潟の酪農経営にフィードバックしている点が大きなポイントだ。適期に収穫されたトウモロコシのNFCは35〜38%くらいになるが、イタリアンは早刈りでも17〜18%、ましてや刈り遅れのイタリアンでは9%まで落ち込むので、配合飼料でも追い付かない状況に陥ってしまう。
 低コスト生産には、NFC収量の高いトウモロコシを自給することが原則といっても過言ではない

■積極的に副産物を利用してコストダウン。


セシリア(RM115日)
を収穫中
 酪農経営の中で多くの支出を占めるのが購入飼料費である。河北潟ではその購入飼料費を少しでも削減するためにトウモロコシを経営に取り入れた。
 一方、タンパク源の導入も安価で生産性向上が計れるものであるべきとし、近隣工場からの副産物である発酵ビール精を利用するようにした。溶解性タンパクのコントロールに留意する必要があるが、高タンパク低エネルギーで、しかもほどよいNDFを含んでおり、トウモロコシとは逆の成分であるため飼料設計上非常に利用しやすい。
■河北潟は21世紀に向け更に前進。

トウモロコシ播種は低コスト実現への第一歩だ!
 河北潟では、トウモロコシを経営に取り入れたことで確実に成績を伸ばしている。現在21.4%の乾物自給率を通年で30%以上にし、尚一層のコストダウンに向け機械の共有化、圃場作業のコントラクター化、また、最終的にはTMRセンターの稼働も含め大きな夢を持っている。
 為替や穀物相場の変動、低乳価など日々の経済が大きく揺れ動く中、確固たる酪農経営を永続するためにはコーンサイレージの持つパフォーマンスを最大限に生かすことが21世紀に向けての戦略となってくる。