無くなって初めて分かったデントコーンの価値

 酪農家Aさんは98年の夏、思いがけない経験をした。ここ数年粗飼料はデントコーンサイレージを中心としたメニューを組み、通年で現物18キロを給与していた。ところが、昨年の夏、前作の不作と増頭によりこのサイレージがまるまる1ヶ月切れるという事態を経験したのだ。以前にもサイレージが不足したことはあったが、当時はあまり給与量が多くなく、しかも量を制.限して調整してきたためデントコーンの価値は漠然としか考えたことがなかった。しかし、18キロのサイレージが1ケ月にわたり完全に切れてみると、改めてデントコーンのスゴサをハッキリと認識したのだ。

■デントコーンは安い投資

【表1】デントコーンサイレージと代替したエサのコストの比較

デントコーンサイレージ
DM30%
(現物18s・乾物5.4s)

25×5.4=135円
デントコーンの生産コスト(乾物s当り)

項目

種子・肥料・除草剤 6
コントラクター委託費 8
償却費その他 11
合計 25


圧ペントウモロコシ1.0s
オーツヘイ3.0s
アルファルファ乾草2.0s

30+46×3+53×2=274円

購入粗飼料の単価(s当り)

品目

圧ペントウモロコシ

30

オーツヘイ

46

アルファルファ乾草

53

合計 129

 Aさんは18キロのデントコーンサイレージを補うために表1に示した購入飼料を使った。購入粗飼料は高くても出来る限り最高級のものを使ったが、これは過去の経験から高泌乳牛に必要な投資だと考えているからだ。幸いなことにこの1ヶ月間に乳量を落とすことはなかったが、デントコーンに比較し、著しくコストが上がってしまった。デントコーンの時は18キロで135円しかかからなかったのに、これを補う購入飼料は274円と約2倍となったのだ。サイレージ不足は期せずして、Aさんに明確な価値を認識させた。
 また、Aさんはコストだけでなく食わせやすさでも新たな経験をした。デントコーンのときは、上から濃厚飼料を振りかけるだけで食ったが、代替のエサではエサの選り好みがみられ、給与の順序や時間を変えないと食い込めなかったのだ。Aさんは、
円高などによって購入飼料が相当安くなったとしても、コスト面だけでなく乾物摂取量からみてもデントコーンを食わせる価値があると経験的に知った。

■失敗から学んだエナジーコンセプト

【図1】粗飼料の栄養成分

・NDFが高いと乾物摂取量は逆に低くなる
・高泌乳牛にNDFの高いエサを給与すると、食い込めなくなり、エネルギー不足に陥る
・デントコーンはNDFが低く、かつ産乳エネルギーが高く、高泌乳牛にピッタリだ

 図1は一般的に流通している粗飼料の成分を示した。今日のように改良された乳牛では、乾物摂取量を落とすことなく、いかに高泌乳にみあったエネルギーを供給するかが重要だ。いい換えれば、限られたルーメン容積に乳牛の健康を損なうことなく高泌乳にみあったエネルギーを供給してやるかだ。このためには、NDF(総センイ)が低く、産乳エネルギーの高い粗飼料を使わないと、必要なエネルギーを満たしてやることは出来ない。デントコーンサイレージは、この意味でピッタリだ。Aさんもかつて、イタリアンのロールを主体としたサイレージ作りをしていたことがあった。「刈取りからロール作りまで、全て機械でできて楽だ」といわれていたからだ。しかし、現実は違った。ロール毎の品質に著しくバラツキがあり、牛が食ってくれず、調子が悪くなってしまうことが多かったのだ。


収穫が天候に左右されやすく、質の高いロールを作ることは意外と難しい
また、楽だといわれていた作業も、雨との戦いであり意外と手間がかかり、収穫機の機械代も非常に大きかった。このため最近ではロールを補完的にしか使っておらず、収穫したロールは育成用で搾乳牛には一切与えていない。Aさんはずいぶん道草を食ったが、結局デントコーンに戻ってきたのだ。
 Aさんがロールから体験したことは、「
いくら量がとれても結局品質が伴っていなければ、エサとして使えない。特に多くのエネルギーを必要とする高泌乳牛になればなるほど明確になってくる」ということだ。

■今年はデントコーンの面積拡大だ

コントラクターとバンカーサイロの利用により、収穫は短時間で出来るようになった

 Aさんはここ数年、デントコーンの収穫を大型の自走式ハーベスタを保有するコントラクター組織に委託するようになった。このためデントコーンの収穫は極めて短時間で出来るようになり、大変だった収穫作業はデントコーン栽培の支障にならなくなってきた。また、バンカーサイロも設置し、短時間に高密度でサイレージを詰め込むことが出来るようになったため、サイレージの品質も安定してきた。デントコーン作りの最大のメリットは、一回の収穫作業で大量に、高品質のサイレージが出来、しかも楽なことだ。今年はデントコーンの面積を拡大し、給与量を徐々に増やしていこうとAさんは考えている。