トウモロコシの肥培管理
−生育を左右するリン酸施肥のポイント−
■VA菌根菌が示したリン酸の重要性
昨年、トウモロコシに対するリン酸の効果を再確認させる話題が新聞紙上に掲載された。VA菌根菌と呼ばれる土壌微生物の増加でトウモロコシの収量が著しく高くなるという研究結果だ。
VA菌根菌とは作物の根と共生する糸状菌の一種で、共生作物のリン酸吸収を助ける働きをする。特にトウモロコシや豆類、緑肥作物として利用が増えているヒマワリ等はこの菌と共生率が高く、リン酸吸収の多くを依存している。これらの共生作物を植えると土壌中のVA菌根菌濃度が高くなるために、後作の共生作物のリン酸吸収量が増加することになる。
一連の試験の中では、特に生育初期のリン酸吸収量とトウモロコシの収量との関係が深いことが報告されている。逆にVA菌根菌と共生しないビートのような作物を前作とした場合は、後作のトウモロコシの収量が減少する傾向も認められている。これは、よく言われる「ビートの後のテントコーンはとれない」という経験則とも一致する。
代表的な菌根菌共生作物であるヒマワリ。小麦収穫後に緑肥として利用すれば翌年のトウモロコシや豆類の増収が期待できる。
■リン酸施肥が生育と収量に与える影響
リン酸増肥による増収効果は過去に多くの試験で実証されている。トウモロコシはもともとリン酸吸収力が弱い作物だが、北海道のように春先に低温が続くと吸収力がさらに弱まるため、我々の想像以上に生育を左右する場合がある。
実際の圃場データでリン酸施肥方法の違いによる影響を見てみよう。図1は、昨年十勝管内忠類村で行なわれたリン酸増肥試験の結果である。リン酸増肥区は慣行区に比べて10%近く収量が高くなり、また「雌穂乾物率が高い登熟が早い」傾向が見られる。
図2はリン酸肥料を元肥で入れた場合と後から追肥で入れた場合とを比較した結果である。リン酸追肥区(播種時は無施肥)では4〜5葉期から顕著なリン欠乏症状が現われ、そのまま生育は著しく停滞した。リン酸はその後追肥されたが生育は終始劣ったままで、最終的には慣行区に比べて乾物収量が3割減収し、また登熟の遅れも示した。これらの結果は、リン酸施肥が実際の圃場でも収量や熟期に大きく影響することを示している。この試験では調査していないが、一般にリン不足は雌穂先端の不稔やねじれ、根の発育不良による倒伏の発生などの障害も引き起こすと言われている。また、リン酸は特に生育初期の吸収量が重要とされており、初期に欠乏症が生じた場合は、追肥で生育を回復するのが極めて難しいこともこの試験では明らかである。【図1】リン酸の増肥効果
【図2】リン酸施肥時期による
収量の違い
■リン酸施肥はスターター効果がポイント
リン酸肥料は、生育初期に効くスターター肥料としての効果が高いものと、生育期間を通じて肥料としての効果が続くものの二つに分けられる。化成肥料の中では前者が即効性の水溶性リン酸として、後者が遅効性のく溶性リン酸として一緒に含まれているのだが、生育初期の吸収量の重要性を考慮すれば、この二つは別々の肥料と考えたほうが良い。
土壌分析でリン酸が不足と診断されたり、リン酸吸収係数が高い畑では施肥基準の量に加えてスターターとして過石のような水溶性リン酸を増肥することが勧められる。また、スターター肥料は幼根が吸収しやすい位置に必要量が存在することが重要となるため、この場合は作条施肥が望ましい。
一方、土壌分析などでリン酸が過剰と診断され、減肥が必要な場合はリン酸肥料全体で減肥しても、水溶性リン酸の割合を増すなどしてリン酸の初期効果を減じないように注意すべきだ。化成肥料全体を減肥する場合も結果として、スターターのリン酸肥料が不足することがあるので、同様の対応が必要となる。全層施肥を行なう場合は、リンが不足気味の畑であれば、リン酸肥料とチッ素肥料の一部は作条で入れたほうが安全である。
■適切な肥培管理がトウモロコシの能力を引き出す
きわめて吸肥性の高いトウモロコシは、一方で養分の過不足に収量が大きく影響される作物でもある。実際、肥培管理の改善で増収できる可能性のある畑は、まだまだたくさんあるように感じられる。「今年も去年と同じ肥料」を選ぶのではなく、「今年の肥料は何にするか」をさらに検討して、トウモロコシのパワーをもっともっと引き出して欲しい。 収量性の高い品種は適切な肥培管理で更に能力を発揮する。新品種「マカレナ」(左)と95日クラス「クラリカ」(右)。