動き始めたトウモロコシの不耕起栽培

 三年前から我々はトウモロコシの不耕起栽培について紹介し、試験を重ね、実践に結び付けてきた。最初はわずか0.3haで始めた試験が、翌年には33haになり、そして昨年は不耕起プランターの普及も始まり、なんと300haにまで広がってきた。 今年は熊本を中心に更に不耕起プランターの普及台数も増えるため、おそらく500ha以上の面積にまで拡大する勢いだ。現在のところ九州の二期作での不耕起栽培が主流であるが、他の地域でも今後イタリアン・麦などの後作にこの不耕起栽培が徐々に導入されていくであろう。

■常識へのこだわりを捨てられるか
 これまで、各地で機会あるごとにトウモロコシの不耕起栽培を紹介しているが、中には興味を持ちながらも導入に踏み込めない例も少なくない。その大きな理由の一つとして、常識とされている今までのやり方(耕起法)から脱却できないという問題があげられる。確かに、「畑を耕さないでトウモロコシができる訳がない。たとえ育ったとしてもまともな収量は取れっこない」と考えるのは無理もないかもしれない。しかし、実際我々が行った比較実証試験でも物語っているように(表1)(図1)、不耕起法でも生育・収量とも耕起法と何ら変わらないのである。それを実践で確かめ、経験的に納得できだからこそ、多くの農家が昨年で約300haもの面積で取り組むようになったのだ。すなわち彼らは過去の常識へのこだわりから一歩抜け出した人たちなのだ。

【図1】不耕起法(左)と耕起法(右)の生育比較。全く差は見られない。
【表1】耕起栽培と不耕起栽培の収量比較
(パイオニア現地試験結果(熊本)より)

■不耕起栽培のメリットは何だ
 当然の事ながら、不耕起栽培は畑を耕起せずに播種するため、最大のメリットとして作業時間、労力の大幅削減があげられる。実際弊社の提供している不耕起用プランターを使用すれば、10a当りの播種に要する時間はわずか15分で済み、耕起法による一連の作業所要時間75分と比較すると、何と約5分の1しかかからないのだ(表2)。しかも必要ならラウンドアップ等の除草剤を同時散布することもできる。これは単に時間、労力だけでなく経費の節減にもつながる。また、播種のタイミングを逃さないという点もあげられる。トウモロコシやイタリアン等の収穫後、プラウやロータリーをかけた後まとまった降雨があった場合、なかなか畑が乾かずに播種が遅れてしまった、という経験はよくあると思う。しかし不耕起では、表面水がまず流出するため、雨が上がり後の乾きが早く、耕起より播種のタイミングを逃しにくい。これは特に、九州などで播種日が重要となる二期作では非常に大きな意味を持つ。

【表2】耕起法と不耕起法の作業時間比較

播種方法

作業時間(分/10a)

ロータリー耕

播種

除草剤散布

耕起法

38

26

11

75

不耕起法

← 15 →

15

■不耕起栽培のメリットは何だ
 トウモロコシの不耕起栽培を成功させるためには、これまでにも述べてきたように、状況に応じた雑草の処理方法、品種の選択、土壌条件(粘土質土壌、排水の悪い土壌は避ける)など栽培技術面での重要な要素もあるが、基本的な必要要素として不耕起播種できるプランターの存在も大きい。
従来のプランターは耕起した畑に播種する事を前提につくられているため、現実的に不耕起播種は困難である。そこで我々はあらゆる条件下でも不耕起で播けるプランターを導入し紹介している(図2)。
不耕起の場合、土壌が硬い、前作の刈り株や根が残っている等の過酷な条件下で播.種する場合が多いが、このプランターは重量、強度に優れており、問題なく播種できる。また、優れた点として、

@播種・施肥・覆土・鎮圧(除草剤散布)を同時に行えるので、労力を削減できる。
A時速7〜10キロという高速で播種できるので作業時間が短縮できる。
B種子の形・大きさに関係なく一粒点播できるフィンガーピックアップ方式(図3)を装備しているので播種板調整の必要がない。
C不耕起だけでなく、簡単な調整で普通の耕起栽培用の播種機としても使える。

などがあげられる。このようなプランターの出現と、栽培事例の増加で今後トウモロコシの不耕起栽培はますます身近なものになっていくであろう。


【図2】不耕起プランター。雑草・刈り株があっても確実に播種できる。

【図3】種子の形・大きさを選ばないフィンガーピックアップ方式。