広がるトウモロコシの不耕起栽培


大型自走式ハーベスターで収穫。短時間で効率的に収穫できる。
この収穫後不耕起プランターで二期作トウモロコシが播種される。

1997年夏、我々はトウモロコシの不耕起栽培試験を始めた。当時ほとんどの人が、畑を耕さないでトウモロコシができるとは考えもしなかった。
 あれから約4年、熊本県の酪農中心地帯では多くの人々が実際の経営に不耕起栽培を取り入れ、効率的な飼料生産を行うまでになった。宮崎・鹿児島でも2年前から何人もの酪農家がトウモロコシの不耕起栽培を始めている。また昨年は、北海道、石川県、鳥取県の酪農家も不耕起栽培に挑戦し予想以上の成果を収めた。
 おそらく今年は、不耕起で播種されるトウモロコシ面積は九州を中心に500ヘクタールを超えるものと推定される。この数字はトウモロコシ全体からするとまだ少ない。しかし
不耕起栽培は慣行法と比較するとわずか5分の1の作業時間で播種が可能で、これからの省力化栽培による規模拡大の切り札となる技術だ。不耕起栽培の先進地である熊本県菊池郡の取り組みを紹介しよう。

■コントラクターと不耕起栽培の組み合わせ。
二期作の不耕起播種。一期作の収穫直後、スラリーを散布し、不耕起播種をしている。播種と同時に非選択性除草剤が高濃度・低量で散布される。トラクターの前のタンクには除草剤、プランターには小型スプレイヤーが装備されている。

 熊本県菊池郡は酪農の中心地帯であり、約2,500ヘクタールのトウモロコシが栽培されている。この地域では過去数年の間にいくつものコントラクター組合が組織され、すでにこの地域全体の約4割のトウモロコシ面積を収穫するまでになっている。
 飼料生産においてこの地域の最大の特徴は、年に2回トウモロコシを収穫する二期作体系だ。四月に一期作を播種し、7月下旬から8月上旬までに収穫すると同時に二期作を播種し11月に収穫する方法だ。少ない耕地面積でも温暖な環境条件を利用し、糞尿を上手くリサイクルしながら最大限の乾物生産性を得る九州ならではの方式だ。

飼料麦収穫後に不耕起栽培されたトウモロコシ。こんな挑戦もしている。
 ところが、この栽培方法のネックは高温・多湿期に一期作目の収穫と二期作の播種がほぼ同時進行でおこなわれるため農家の大きな負担となっていた。 しかし、ここにコントラクターという受け皿ができ、大型自走式ハーベスターで短時間に収穫をしてくれるようになった。しかもいくつかの組合では、我々のすすめに応じて不耕起プランターを導入し、二期作トウモロコシを不耕起で播種するサービスも始めたのだ。これにより大きく不耕起栽培の面積が拡大し、農家も気軽にトウモロコシを作れるようになったのだ。
 このように、この地域での不耕起栽培の取り組みは、二期作トウモロコシの播種が主流であるものの、一部の人々はすでに春播きトウモロコシや、五月以降のイタリアンや麦の収穫直後にトウモロコシの不耕起栽培を積極的に行っている。

■カンタンな不耕起栽培
 不耕起栽培をするに当っての最大の障害は、「耕起しないでトウモロコシが出来る訳がない」という農耕民族特有の思い込みといっても過言ではない。一度自らの目で不耕起栽培を見ると多くの人があまりにもカンタンな作業に驚くばかりだ。しかし
不耕起栽培を成功させるためには、守るべき三つの大きな要素がある。@雑草管理、A適切な品種の選択、B適切な土壌の選択、である。不耕起で播種する場合、播種時からすでに雑草があり、いかにして効果的に雑草を抑制するかが大きなポイントとなる。ここで重要なのは、雑草を完全に防除するのではなくトウモロコシの生育に障害がない程度に抑制することだ。つまり播種時には既存の雑草を抑制するため非選択性除草剤を使い、トウモロコシの四葉期から五葉期に必要に応じ生育期処理剤でその後発生した雑草を抑制する。この雑草管理がうまくゆけば、不耕起は半分以上成功したといっても良い。
 雑草の発生がほとんどない場合は、播種直後に新しいトウモロコシ用除草剤「エコトップ乳剤」が有効だ。この除草剤は耕起でも有効に使えることは言うまでもない。
 次に重要なことは、品種の選択である。不耕起法は慣行法と比較すると地温の上昇が遅く、種子と土壌との接触が不均一なため初期の生育がやや悪い。品種によっては「苗立ち枯れ病」を誘発するので、初期生育の良い品種の選択が必要となる。
 土壌条件も大切だ。不耕起栽培は水はけの良い火山灰土壌に非常に適しているが、粘土質が強く水はけの悪い土壌は生育が悪くなるので注意が必要だ。

除草剤散布前

除草剤散布15日後

効果的に抑制された雑草。
不耕起栽培では雑草管理が
最も重要となる。

 不耕起栽培に興味をお持ちの方、ぜひこの熊本県菊池郡の状況をご覧になることをオススメする。