高泌乳イコール濃厚飼料ではない!

 飼料の組み立てを農家に聞くと粗飼科(乾草とサイレージの摂取量がlOkgに満たない場合が多い。多くの酪農家が「粗飼料の比率を多くすると高泌乳牛の栄養充足を満たせないから…」と誤解している人がほとんどである。
 濃厚飼料をある程度制限しながら、栄養バランスをとってみると思った以上に粗飼料の摂取量が増加し、栄養充足も十分なされるのだと言う事をご存知だろうか?(表1)。
「粗飼料を食べないのは濃厚飼料の過剰給与」なのかもしれないと疑ってみることも重要である。

【表1】粗飼料飽食時の採食量(体重:635kg、FCM:25kg)
 

粗飼料
DMI(kg)

濃厚飼料
DMI(kg)

合計
DMI(kg)

DMI
体重(%)

NDF
体重(%)

牧草サイレージ

17.7

3.6

21.3

3.4

1.71

トウモロコシサイレージ

15.5

3.6

19.1

3.1

1.15

50%+50%

18.88

3.6

22.4

3.5

1.59


購入飼料を増やさず乳量を上げる方法を考えなくてはやっていけない時代である。「○○○が×××に良いから」というセールストークに乗って、本当に必要かどうかわからないものを飼料として購入してはいないだろうか?

--- こんなことはおかしいと思ったことはないだろうか?

搾乳牛1頭あたり27kg前後の産乳量で蛋白質のバイパス率を40%に保つことが必要なのだろうか?

搾乳牛1頭あたり27kg前後の産乳量でアミノ酸バランスが本当に必要なのだろうか?

分娩直後の飛び出し乳量が30kg以下なのに乾乳牛のイオンバランスが必要なのだろうか?

 もし心当たりがあるなら、勇気をもって粗飼料と基本的な濃厚飼料だけのシンプルな組み立てに戻してみ予想外の良い結果が生まれるだろう。

賢い酪農家は濃厚飼料の多給は乾物摂取量を低下させることをよ<わかっている。

(グラフ1)

 1986年に行われたマーテンスによる実験では、粗飼料の品質によって適正な濃厚飼料の比率が変わると述べられている(グラフ1)。つまり、粗飼料と濃厚飼料の比率は常に「50:50」ではないのだ。品質の高い粗飼料を得た場合には積極的に濃厚飼料の給与量を減少させ、粗飼料の摂取量を増加させなければ、濃厚飼料過剰給与による結果的な栄養不足を招くのだ。そして、濃厚飼料でどんなに調整しようとも、粗飼料の品質によって、総乾物摂取量ですら、大きく変わってしまうことも忘れてはならない(表2)
【表2】最大産乳量を果たしたときの飼料構成
 

乾物摂取量
(kg/頭/日)

NDF(%)

ADF(%)

粗飼料割合
(%)

アルファルファ乾草

24

36

26

70

とうもろこしサイレージ

20

36

19

55

バミューダ乾草

19

36

15

40


【グラフ2】


こんなことに心当たりがあるなら要注意だ。
乳検乳量は増加しても分娩間隔が延びて出荷乳量はそれほど増加していない。
乳代収益は乳検乳量とともに増加していない。
搾乳牛の事故率が乳検乳量とともに増加している。
乳検乳量の増加とともに出費もそれ以上に増加している。
トウモロコシを水分70%で収穫すると糞に未消化穀実が多く混入する。
購入飼料の種類がビタミンミネラルを含めて5種類以上になっている。

 乾物率が30%を超えたトウモロコシサイレージの多給を行ったとき、糞中に未消化穀実が多く出現した。(表3)のような対処方法をとった後、3日くらいで未消化穀物が消え、産乳量が増加し、かつ、乳成分も良好な状態を保ったのだ。どちらの飼料の組み立てもコンピューターによる飼料計算ではOKとなる。しかし、現実の結果には大きな違いがあるのだ。乳牛の観察を無視した飼料計算が役に立たない理由がここにある。対処方法の基本的な考え方は、「濃厚飼料を減らし、粗飼料の摂取量を最大限に引き上げる工夫をする。」というだけのものだ。それによって濃厚飼料自体の効率も高まるのだ。

【表3】糞中未消化穀実が出たときの飼料組み立て変更

飼料

糞中子実が多いとき

糞中子実が少ないとき

摂取量(kg)

比率(%)

摂取量(kg)

比率(%)

トウモロコシサイレージ

12.9

53.6

14.0

57.3

大豆粕

3.6

14.8

4.5

18.3

ニューリード18号

7.4

30.8

5.8

23.6

スーパーリンカル5号

0.2

0.8

0.2

0.8

TOTAL

24.1

 

24.4

 

栄養成分

摂取量(kg)

比率(%)

摂取量(kg)

比率(%)

TDN

17.5

72.9

17.7

72.5

CP

4.3

17.88

4.4

18.2

NDF

7.7

32.2

8.0

32.6

ADF

4.3

17.9

4.5

18.5

F-TDN/T-TDN

48.9

 

52.6

 

(ホクレン畜産実験研修牧場1997年)

 これはトウモロコシサイレージだけにあてはまることではない。牧草サイレージを主体に利用する場合にも同じようになる。牧草サイレージ主体の場合には、軟便になったり、配合飼料の給与のわりに乳量が出ないとか毛づやが悪くなったり、繁殖関係のトラブルが頻発することが確認されている。
 購入飼料依存型の給与を考え直すべきときに来ているのだ。圃場面積に限りがあるなら、質と量を同時に確保できるトウモロコシサイレージを中心に考え、購入飼料費を最小限にしかも上手に利用し、所得率の向上を目指そうではないか。