生育初期のとうもろこしの葉色−紫色の葉の原因

生育初期にとうもろこしの葉が紫色に変わる直接の原因は葉の中に赤や紫色に強く関係する色素であるアントシアニンが過剰に蓄積されるためです。葉の紫化は、時により低温による生育障害と説明されたり土壌中のりん酸分の不足と説明されたりします。この理由を理解するにはアントシアニン蓄積のメカニズムを知る必要があります。(下図)

低温等による根の発育不良または土壌中のリン酸欠乏

りん酸吸収量の減少

ATP生成の減少(ATP生成にはリンが必要)

遊離糖類の集積(糖からでんぷんの合成にはATPが必要)

アントシアニン生成の増大(葉色の紫化)

アントシアニン蓄積の流れ

植物の物質生産に必要なATP(アデノシン・三リン・酸)の生成にリンは不可欠です。何等かの理由でリンが吸収できない場合、光合成によって作られた糖類の移動やでんぷんへの合成がATPの不足から制限され、その結果蓄積した遊離の糖類からアントシアニンが生成されます。

 とうもろこしがリンを吸収できないない理由は二つに分けられます。一つは根の発育は正常なものの土壌中のリン酸含量が低くて吸収量が少なくなる場合(土壌中のリン酸欠乏)、もう一つは土壌中にリン酸分はあるが低温等で根の発育が悪く十分に吸収されていない場合(根の発育不良)です。もちろん実際の圃場では二つの理由が天候等の環境条件と絡み合って紫色の葉が出現する原因となります。またアントシアニンの生成は日中好天で夜温が低い場合にさらに助長されます。

 通常生育が温度上昇に伴って回復すると紫色の葉は緑色に変わりその後の生育に影響はありません。アントシアニンの発現はある意味では作物のストレスを知る良いバロメータで、畑によって現われ方が違えば、土壌の状態や施肥を再検討する良い指標になります。気をつけなければならないことは、アントシアニンの発現には品種間差があり、同じように糖が葉に蓄積されても、品種によっては紫色に変わる品種と変わらない品種があることです。この場合葉が紫色に変わらない品種も紫色の品種と同様に強いストレスを受けていることに変わりはありません。葉が紫色に変わるか変わらないかは遺伝的に色素を生成しやすいかどうかのちがいで、受けているストレスの違いを示すものではありません。

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