イネ科牧草も最新のレイションにフィットさせることができる。
Bill Hahanna, Hiroaki Igarashi

刈り取り時期が適正であれば、イネ科牧草であろうとも良好な採食量と消化率を持つ価値ある粗飼料にすることができるでしょう。
イネ科牧草の乾草やサイレージは、世界の多くの地域において乳牛の飼料中で鍵となる部分を占めています。適正な管理がなされているイネ科牧草の草地(植生)は、抜群の収量性を示します。
さらに・イネ科牧草は、圃場での乾燥が早く、マメ科牧草で経験されるような葉郡損失の増加なしに、反転、集草、降雨によるダメー一ジに耐えることができます。
同じセンイレベルのバランスレイションを用いたミネソタ大学で行われた搾乳牛の給与試験では・高品質で若刈のブルームクラスは、並の品質のアルファルファよりも乾物摂取量も産乳量も高いという結果を示したのです。しかしながら、イネ科牧草をぺ一スとしたレイションには、特別な扱いを必要とするトップ・ハード(高泌乳牛群)に対して、いくつかの特別な限界が存在するのです。

<アルファルファと比較して…>
(イネ科牧草をアルファルファと比較しだ時に)重要となる点は、酸性デタージェントセンイ(ADF)と中性デタージェントセンイ(NDF)の上昇です。これらのセンイ質は、生育ステージ(熟度)が進むとともに増加して行きます(表1参照)。
NDFは、採食量を予測するのに使用されています。一般的に、NDFが上昇すれば、期待される粗飼料の採食量は、低下します(表2参照)。
ADFの大きさは、エネルギーの消化率の指標となります。粗飼料分析所では、その飼料のおおよそのエネルギー価を得るためにセンイを基礎にした換算式を使用しています。
(例:TDN=88.9−[0.779x%ADF])
イネ科牧草とマメ科牧草との間には、細胞壁内容物の含有量と消化率に明らかな違いが存在します。イネ科牧草は、かなり大きな割合でセンイ質を含んでいますが、リグニンの割合は少ないのです。
しかしながら、成熟度が進むに従ってイネ科牧草の消化率は、マメ科牧草より早く低下します。
たとえ、マメ科牧草のNDF−リグニン(NDFに占めるリグニンの割合)が高かろうとも、イネ科牧草のステム・リグニン(茎中のリグニン)のインパクトの方がより大きいようです。
このセンイに関する情報と乳牛の二一ズをどのように調和させればよいのでしょうか?その答は、『注意を払うこと』しかありません。まるで、乳牛は、われわれの『栄養学の法則』を無視することを楽しんでいるかのようにさえ見えるのです。
NDFシステムには、明かな限界があります。NDFの分析では、センイの消化率の低下と関係しているペクチンの大部分が除外されてしまいます。
さらに、ヘミセルロシック・シュガー(ヘキソース)は、粗飼料のサンプルごとに均一性を保持してはいないのは明かです。ヘキソースのレベルは、マメ科牧草よりイネ科牧草において高く、また、消化率とは逆相関の関係にあります。
残念なことに、乾物摂取量と産乳量に対するNDFの直接的な影響について焦点をあてている給与試験は、ほんのわずかしかありません。そのうえ、粗飼料としてイネ科牧草を用いてなされているものはほとんどないのです。
NDFの研究についての最新の報告では、ミネソタ大学の研究者、シュンとリン(JUNG and LINN)によって行われたものがあります。この研究によれば、NDFの摂取量や含有量は、生産性や乾物摂取量との相関が高くなかったと報告されています。この(NDFと生産性の関係)事柄を複雑にしているのは、草種、乳牛のボディコンディション、飼料の緩衝能・センイの消化率に与える添加物の効果、必要な飼料のセンイの物理性、そして、飼料コストの問題などのすべての要因が、必要とされるセンイのレベルに影響を与えているからなのです。
そして、まだこのような限界があったとしても、農家の経験段階では、NDFは、その飼料の潜在的な採食量をおおよそ評価することのできる『メジャーメント・ツール』として扱うことができると提唱されています。USDA-ARS(米国農務省農業試験場〕の酪農研究者、ティブ・マーテンスによって開発された、乳牛の飼料の計算へのNDFの利用は、粗飼料を最大限に活かして利用するためにデザインされたのです。
いくつかの研究では、乳牛は、イネ科牧草と比べてマメ科牧草という形で、20%以上の乾物を摂取したということが示されています。イネ科牧草は、センイの含有率がマメ科牧章より高く、また、消化により長い時間がかかるということが分かっています。たぶんこれが多くの農家がイネ科牧草を給与したときの方が乳脂率が高いと主張する理由なのでしょう。
問題は、われわれが高い産乳量を支持するだけの乾物摂取量を期待したときに起こります。イネ科牧草のセンイレベルが高いということが、乳牛がその遺伝的な能力の限界まで食べることを阻害します。

<必要なNDF>
最新版のNRCの栄養要求量では、泌乳初期の乳牛の飼料には、最後25〜28%のNDFが推奨されています。しかしながら、センイに関しての『特別な上限』については、分かっていません。泌乳初期の乳牛のためのトータル・レィションはNDFの割合として32〜34%以上に怠らないよう調整されるべきであるという提案が安全であるように思えます。
このことを述べるもう一つの方法は、体重を基礎においたNDFの割合という条件です(NDF/体重比率)。(NDFの)給与レベルは、最大でも、おそらく1.3%を超えないようにすぺきであるということです。たとえば、『体重600kgx1.3%NDF』は、飼料中のNDFの最大量が7.8sであるということになります。すなわち、7.8sNDFを23kgの乾物摂取量で割れば、総飼料中に34%のNDF割合ということになるのです。
このセンイレベルの概算を超えてしまえぱ、乳牛による乾物摂取が、危うくなるかも知れないというもっともな論議がなされるのです。もし、補足的なエネルギーが供給されなければ、乳牛は、乳生産の必要に応じてボディコンディションの過度の動員を当てにしなければならなくなります。いわゆる栄養的な困惑に陥った乳牛は、しばしば、期待したほどの産乳を示さないか、あるいは、受胎の低下という事態を招いてしまうのです。
もし、イネ科牧草を基礎とした飼料を使用し、このセンイに関するガイドラインを超えていて、乾物摂取量あるいはボディコンディションが問題であると思われるならば、以下の点を真剣に検討してください。

●センイの濃度を薄めるために給与飼料中のトウモロコシサイレージの比率を上、イネ科牧草を基礎としている給与飼料の総水分を低下させるために『より乾いた糧飼料』を用意する。

●低センイ性の粗飼料としてアルファルファ乾草を購入し、泌乳初期の乳牛にそれ単独で給与する。

●濃厚飼料の給与量を増加する。しかし、一回の給与量を1.8〜3.6sを超えて給与しないことでアシドーシス発生の可能性を防ぐ。

●34s以上産乳している乳牛には、全粒採油種子(全粒大豆、全粒綿実など〕、動物性油脂(タロ)、ルーメン不活化油脂(バイパス油脂)などの高エネルギー源の補足総与を検討する。

表1.イネ科牧草とマメ科牧草をどう比べるか。
作 物 各種成分の乾物中(%)
粗タンパク 粗センイ ADF NDF リグニン
アルファルファ
乾草、栄養生長初期 23 20 28 38 5
乾草、栄養生長後期 20 22 29 40 7
乾草、開花初期 18 23 31 42 8
乾草、開花中期 17 26 35 46 9
乾草、開花盛期 15 29 37 50 10
パーズフット・トリフオイル
乾草 16 31 36 47 9
赤クロー一バー
青草、開花初期 19 23 31 40 4
青草、開花盛期 15 26 35 43 7
ブルームクラス
青草、栄養生長初期 18 24 31 56 3
青草、成熟期 7 38 44 72 9
乾草、栄養生長後期 16 30 35 65 4
乾草、開花後期 10 37 43 68 8
オーチャードグラス
青草、栄養生長初期 18 25 31 55 3
乾草、開花初期 15 31 34 61 5
乾草、開花後期 8 37 45 72 9
ペレニアル・ライグラス
乾草 9 25 30 41 2
チモシー
乾草、栄養生長後期 17 27 29 55 3
乾草、開花初期 15 28 32 61 4
乾草、開花中期 9 31 36 67 5
乾草、開花盛期 8 32 38 68 6

出典:NRC飼養標準1989年版

表2.粗飼料の品質がどのように摂取量に影響するか。
粗飼料の品質*1 NDF割合
(乾物中%)
乾物摂取量*2
(体重対比%)

エクセレント









劣質
38 3.16
40 3.00
42 2.86
44 2.73
46 2.61
48 2.50
50 2.40
52 2.31
54 2.22

*1 中性デタジェントセンイ(NDF)によって測定
*2 乾物摂取量(体重%)=120÷NDF(%)
マーテンスのデータ(1985年)から制作

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