早播きのリスク、遅播きのリスク

 昨春(1998年)は気温が高く天候にも恵まれた結果、例年よりも早めに播種作業が進みました。発芽・初期生育も順調でしたが、5月下旬から6月上旬にかけての低温時に強い降霜があり、一部では播き直しも含む大きな被害が発生しました。これは「早播きはやはり危険」ということを示しているのでしょうか。早播きは昨年の霜害のような危険もありますが、一般に生育が強健で収量も増えるとされています。そして逆に播種時期の遅れは別の危険を生み出します。
播種時期は生育にどう影響し、どんなリスクがあるのか、そしてリスク回避には何が必要かを整理してみましょう。

■早播きはなぜ有利なのか
早播きがなぜ有利かは、遅播きした場合の生育を考えると分かりやすいでしょう。トウモロコシを通常より遅く播種した場合には、早播きと比べて以下のような傾向が顕著になります。

1. 気温が高いので茎の伸長が早く、早播きした場合より草丈が高くなる。しかし通常茎の太さは細くなり、生育後半で茎折れを起こしやすくなる。
2. 遅播きでは根の発育が小振りになる傾向がある。これは地上部の方が早く成長することに起因すると考えられる。この結果、干ばつ等の土壌に関連したストレスに弱くなり、倒伏も起きやすい。
3. 葉のサイズや光合成能力は水、養分が十分であれば必ずしも低くはないが、LAI(葉面積指数=土地面積に対する葉面積比)は早播きに比べて若干低くなる。
4. 開花が遅れ、登熟期間が短くなる。結果的に熟期に達しなかったり、収量の低下をもたらす。
5. 全般的に各種のストレスに対する耐性が低くなる。

昨年、霜害で播き直しをした畑では、秋口の台風による倒伏の被害も大きい傾向がみられましたが、これは遅播きによるリスクをもろにかぶった結果です。上記の傾向をまとめると、遅播きは収量がやや低くなって熟期が遅れ、しかも生育後半にリスクが大きいということになります。(すなわち、早播きではこの逆となるのです。)

■霜害のリスクを避けるには
北海道の気象データを見ると、5月は日を追って気温が上昇しますが、6月上旬頃にそれまで上昇していた気温がいったん下がって低温期間が訪れる傾向があります。この時期が遅霜の発生する時期です。しかし、トウモロコシの場合3−4葉期であればたとえ霜害を受けても成長点は地下部にあるために生育は回復し、収量には大きな影響を与えません。3−4葉期に達するには北海道では通常3−4週間を要しますので、5月中旬頃の播種では霜害で播き直しをする危険性はほとんどないのです。また過去に霜害があって不安な場合には播種深度をやや深めにすることで(3−5cm程度)成長点がより地下深くに入るため危険をさらに回避できます。
最近は温暖化が指摘されていますが、昨年のように雪解けが早く春の気温が高い場合には、播種時期は自然に早めにシフトします。早期播種は推奨されるとは言うものの、やはり過去の経験なり傾向を加味した上で、危険回避の注意を怠らないことが必要です。

■播種深度と除草剤にも注意を!
特に低温で土壌水分が多い場合に発芽の遅延、不斉一や欠株が起こる場合があります。播種時期は暦の上で機械的には決まりません。春の天候が不順な場合は、気温と地温の上昇を十分に見極めた上で播種時期を判断すべきです。
低温による種子または稚苗に対する影響には、地上部に芽が出る前に地中で土壌菌などの影響で稚苗が枯死してしまうケースと(欠株が増加する)、地上に出た稚苗が低温下で生育停滞を起こすケースが考えられます。前者の場合播種深度が深すぎると(5−10cm)被害を一層大きくします。これは地上に芽が出るまでの期間が長いことと、播種時期から出芽期にかけては地表部より下に行くほど地温が低くなることが影響しています。一般に早期播種になればなるほどこの危険は増します。また後者の生育停滞のケースは、気温の上昇と共に生育が一気に回復する場合がほとんどです。しかし、低温下で稚苗はストレスへの感受性が高くなっています。こうした場合の除草剤散布には十分な注意が必要となります。



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